一人旅の始まりとゴミだらけの町
一人旅に行こうと思う。
突然のことだが、しかし前から行きたいと思っていたところだった。ドイツに来て1か月が経とうとしているが、留学ということもあり学校に行かなければならず、慣れない環境ということもあり1週間を終えると体がずっしりと重くなりどこも行きたくなくなるほど疲れ切っていたので、旅に行く時間がなかったのである。しかし、今は冬休み。時間が手から零れ落ちそうなほどあるので、ここに一人旅を決行しようと決心したわけである。
さて、旅というのはたいていは目的地があって目的地に向かうものだが、私の旅は多くの場合少し異なることがある。というか、鉄道ファン全員に言えることだが、目的地がない場合が多いのだ。では旅の目的は何か。それは、鉄道に乗ることであり、撮ることである。つまりは世間一般の指す旅の、「最も無駄な時間」を、目的にしているのである。その目的は、今回も変わらない。ただ鉄道に乗るだけの旅をドイツでもしようと思う。
余興が長いと本文が短くなるので、さっさと本題に移ろうと思う。(といっても文字数の制限などもないので自由に書けばいい話だが)
今私がいるのは、Remscheid(レムシャイト)という町である。デュッセルドルフから50㎞ほど離れた町で、規模は大きくはないが栄えてはいる町だ。今回私はそのレムシャイトの町の駅から、旅に出る。
ドイツでは駅のことをBahnhof(バーンホフ)という。そして町の中心部の大きな駅のことをHauptBahnhof(ハウプトバーンホフ(略してHbf))と言われる。今回私が乗車するのはレムシャイトHbf、S7バーンの駅だ。Sバーンというのは大都市近郊の路線のことで、日本で言うと京浜東北線が似たようなイメージだろう。ドイツの鉄道は日本の鉄道とあまりにも違うのでいちいち説明を挟まなくてはいけないが、ここまで書いてきて私はまだ列車に乗れてすらいない。しかし、ここで私は大きな問題に直面する。カメラのSDカードを家に置いてきてしまったのだ。それがないと撮影ができないのだが、うっかりとしたミスでSDカードだけ置いてきてしまったものだから、私はただただ重いだけの一眼レフカメラを1日中持ち歩く羽目になったのである。
9時5分、2両編成の気動車に乗り旅が始まる。まず初めに向かうのは、ゾーリンゲンHbfだ。途中、ミュンクシュテナー橋という橋を渡るのだが、この橋はドイツの鉄道橋で最も高い橋らしく、確かに深く刻まれた渓谷の上を飄々と通過していく様はなかなかスリルがある。この橋が開通するまではレムシャイトに行くために大きく迂回していたというのだから、一本の橋の効果というのは絶大である。
ここで余談になるが、ドイツの駅というのはゴミだらけな駅がとても多い。線路にはお菓子やスーパーの袋、挙句の果てには靴が片っぽ落ちていたり、ホームではたばこの吸い殻が踏みつぶされて模様ができている。しかしこれは駅だけの話ではなく、町の歩道やバス停などいたるところにゴミがあふれており、レムシャイトの駅のバス停に向かう地下道についてはいつも湿っているせいでゴミが悪臭を放って無残な姿で転がっている。いくら建物がきれいでガラス張りのバス停施設を建てようとゴミがたくさんあるだけで汚く見えてしまうのだと改めて感じた。やはり、ゴミはゴミ箱に、たばこは吸い殻入れに、といった些細な行動を心がけることは非常に大切だと思いなおした。日本の町がきれいだといわれるのは、そういった行動が当たり前にできる人が多いからなのだろう。
さて、話を戻して旅を進めよう。列車はゾーリンゲンHbfに到着し、私はここで乗り換えてケルンHbfに向かう予定だ。10分の乗り換え時間で、私はRE48ケルン行に乗車した。列車は広大な大地を順調に走っていき、レバークーゼンという駅に着いた。すぐ発車するだろうと思っていたがなかなか発車しない。通過待ちでもするのかなと思っていたがなかなか通過列車が来ず、ようやく通過列車が来た頃には発車時刻を10分も過ぎていた。そしてその後も5分ほど停車し、やっとのことでレバークーゼンを発車したころには遅れが15分にもなっていた。ドイツの列車はよく遅れるというが、その「よく遅れる」瞬間を体感してしまったのである。しかも車掌さんがなにやら放送していたのだが私がドイツ語を聞き取れないせいでなぜ遅れたのかがわからない。おそらく通過列車待ちなのだろうが、結局なぜ遅れたかわからないままケルンHbfに15分遅れのまま到着した。
ドイツ鉄道諸事情 傀儡偽人 @178rs
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