ドイツ鉄道諸事情
傀儡偽人
鉄道ファンの宿命である、比較
2025年1月4日深夜1時半、筆を執る。書こう書こうと思っていたエッセイのアイデアがふと頭の中におりてきたので、ここに記しておく。
私が鉄道ファンであることは既知のことであると信じている。というか、私が鉄道ファンでなければこのエッセイは成立しないので、その前提で話を進めさせていただく。さて、私は根っからの鉄道ファンで、その根源は私の記憶が及ばないところにあるらしい。なので、まあいろいろな理由のこじつけはできるし簡単なことだが、本当のところどうして好きなのかははっきりしない。結局、今好きであれば過去の理由なんていらないだろう。鉄道好きであるという事実だけが、今私が宣言できる唯一の事実である。
昔「鉄道研究家」と名乗っていた時期があった。オタク扱いされるのがいやだったからである。何せオタクというのはマイナスイメージが先行するもので、私はそういうオタク扱いされるのが滅法嫌だったのである。しかし、蓋を開けてみれば私はとびぬけて研究家だったわけではなく、そこら中にいるオタクたちと何ら変わらない一人のオタクであったのは、まぎれもない事実である。
ドイツにいる。旅行ではなく、3か月間の交換留学のためだ。留学というからにはドイツ語ができていて当然なのだろうが、私にそれを望んではいけない。ドイツ語は、さっぱりだ。しかし英語は少しだけわかるので、なんとかやっていけている(そうはいっても英検3級も怪しいような英語力だが)。なぜドイツに来たか。それは交換相手がドイツ人で、先方からお誘いがあったから、と言ってしまえばそれまでだが、あえて能動的な理由をつけようと思えばドイツ=鉄道の国というイメージがあったからだ。大の鉄道オタクである私にとってドイツに行けることはドイツの鉄道に乗れることであり、自分の鉄道の知見を広げるいい機会であると捉えたので、ドイツ行きを選んだ。これが、私のドイツ行きの理由である。
さて、いざドイツの鉄道に乗ろうと思った時に、重要なきっぷがある。「ドイツランドチケット」。月額40ユーロでドイツ鉄道を乗り放題になる超お得きっぷだ。このきっぷは、ICEやICなどの国際列車は利用できないので、数日のみの利用の観光客向けではないが、日常的に鉄道を利用する沿線住民にはもってこいなきっぷである。実際に、列車に乗ってる多くの人がこのきっぷを使っていて、その利便性は圧倒的なものである。私も、日本にいるときは常に財布とにらめっこしておどおどと出かけるのだが、ドイツでは胸を張ってどんどん鉄道に乗れるので、そこらへんはドイツのシステムの圧倒的勝利であるように思える。このドイツランドチケットはコロナ禍で利用者が減少したドイツ鉄道が地域住民向けに発売したきっぷだそうで、比較的新しいシステムなようだ。
ドイツの鉄道インフラは、当然のことだが日本と大きく異なる。その差異を、いくつか記していこう。
まず、改札の有無である。日本の駅は地方の無人駅などを除き、大抵は武骨な駅舎(時々美しいものもある)にゴツい改札機が待ち構えていて、そこにきっぷやICカードをタッチして駅構内に入り列車に乗るという仕組みである。しかし、ドイツではあのゴツい改札機は存在しない。町や道路から直接ホームに入り、そのまま列車にのり、車内で改札を受ける。ドイツランドチケットなどを使っていない限り、ホームにある券売機できっぷを買うのだが、結構な確率で改札する車掌さんが巡回してこないので、無賃乗車も簡単にできる。ドイツ鉄道もその問題で頭を悩ませているらしいが、改札機の導入予定はないようだ。何しろ、日本のあのゴツい改札機、一台約1000万円ほどするらしいので、今から設置し始めたら都心部の駅だけでも莫大な予算が必要となる。収支がカツカツのドイツ鉄道に、その余裕はないだろう。
次に、車両の組成の違いについて。日本の場合、ほぼすべての車両がボギー車で、ドアが3つか4つほどついていて、都心部の車両は10両もの車両で1編成がなっている。また、前頭部は多くの場合切妻だったり緩い流線形だったりとコストを重視したデザインになっていることが多い。しかしドイツ鉄道だと、一般車の両端は流線形、車両間に台車がある連接車でドアは1両に1個、さらには基本的に3両や4両からなる短編成をいくつか連結して走る、といった日本と真逆のような構成になっている。さらに座席は日本の場合地域差があるもののロングシートが現在主流になってきており、ドイツのクロスシートが主流なのも日本の真逆である。座席についてはドイツのもののほうが旅情をそそられるが、ドイツの車両の座席配置は大変気持ち悪く、客室の真ん中あたりでちょうど向き合うように端から座席が配置されており、それが奇数ともなると前3列は後ろを向き、後ろ2列は前を向く、といった感じの気持ち悪い配置になっていることもある。
ドイツの鉄道は基本的に国営であり、国全体で車両形式が同じようなものだったりサインが同じだったりするが、日本はJRを基本とした民営鉄道網であり、車両の構造やサインが各社で異なるのが特徴である。また、ドイツ鉄道は一元的なインフラ構築ができ、公共物としての鉄道インフラという本来の鉄道に求められることを実現しているが、日本の場合経営競争や不動産事業などで鉄道が運行されており、公営と民営どちらが良いのかは議論すべきポイントである。
この3つが日本とドイツの大きな差異だが、このほかにも黄色い点字ブロックがなかったり、架線柱の架線を吊り下げる部分がワイヤーだったり、駅のホームの高さが低いので列車のドアも低くそのせいで車内が凸凹だったりと書き出したら止まらないほど違いがあるのでドイツ鉄道と日本の鉄道の違いについて記すのはここまでにしようと思う。
次回からは、初めての一人旅の様子を記していこうと思う。更新日は未定です。
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