第5話 学校のイジメの報復方法は至って簡単らしい
ペラペラとラブレターを振りながら
それにしても、
「部活かぁ……」
当時の事を考えるだけでまだ手が震える。足が重い。だけど、今は一人じゃない。自分には零がいる。クラスメイト達からお茶でもして帰らないかというありがたいお誘いをさくらは丁重にお断りした。テニスラケットを見せて、「部活に顔出さないとだから」と言ってて吐き気が襲ってくる。
化粧室に……と思った時そこに零の姿。
「んじゃいこうか? あー、あとちょいとトモダチがボク等の部活風景を見たいってさ」
「ボク等? トモダチ? えっ?」
ランチタイム時よりも多い6名程の生徒を連れてきた零、なるほど。部活見学をされていればさくらが表面上のイジメを受ける事もない上に牽制できる。そして目に見えない所ので陰湿なイジメに対しては……
「ボクが君の専属マネージャーだから安心して部活に励むといいよ。好きなんだろ? テニス」
これだけのお膳立てをしてくれているのであれば自分も立ち向かわなければならない。テニスコートへとさくらは向かう。三年生まで合わせて22名の部員数。その全員がさくらになにかしらの嫌がらせを行ってきた。中には嫌々行った者もいたのだろうが、さくらからしたら知った事ではない。彼女等がさくらを見る目、それに怯みそうになる。
「せんせー! 学園最強のプレイヤーを連れ戻すのに時間かかったんだぜぇ!」
と開口一番零がそう言うとやはり怪訝な表情をしていた先生が「そうか、仲谷。準備してランニング」と言われさくらは「はい」と他の生徒の一番後ろについて走る。久しぶりに身体を動かす。体力は少し落ちたかもしれないが、大丈夫。感覚は戻ってくる。
それに、
「仲谷ちゃん、ふぁいとー!」
「さくらー、こっち見てー!」
と零が連れてきたトップカーストの先輩達の声援もあり、足に力が入る。今までは応援の声なんて邪魔だと思っていたのに、心が弱っている時はこれほどまでに響くものなんだなと零がつれてきた先輩達に手をふってみると、とたんにスマホで写真撮影、そしてさらなる声援。
これみよがしにさくらに上位グループの友人が多い事を見せつけられ、さくらをイジメていた生徒達には当初さくらが部活で活躍をしていた時と同じ謂われのない怨恨がわく、イジメグループの主犯だった二年生の先輩が視線で合図すると女生徒の一人がランニングの列から外れ更衣室へと向かっていく。さくらの私物に嫌がらせの一つでもしようというのだろうが……
「さくらー、ラスト1周ファイト―! スポドリ、おいすー!」
「ありがとしずき」
専属マネージャーを謳うだけはあり、さくらのサポートにさくらのバックからスポドリを取り出して渡した。着替えも持ち物も全て零が管理している為手が出せない。そして部員達は不満が募る。
「コーチ、仲谷さんだけ専属マネージャーとかおかしくないですか?」
二年、三年が顧問に直談判、当然さくらにだけマネージャーがいるという状況に不平不満が爆発する。もちろん顧問の女子教師。
「全員のマネージャーとして満遍なくサポートしてくれないか?」
「いやです。ボクがさくらのサポートをしているのはさくらには才能があるからだよ。他は残念ながらそうじゃない、才能がない人間と付き合ってなんになるのさ?」
事実、さくらが部活でイジメにあった理由は他よりも秀でていたから、それを零は逆手にとって部員ディすりをはじめる。それには先輩連中も黙っていない。口論になりかけ、伊藤瑞穂が止めようとした時、零はこう提案した。
「再来週地区予選あるんだろ? メンバーはもう決まっていると聞いてるけどさ。さくらが個人戦は出れるとして、団体戦のシングルス、一枠賭けて勝負しようじゃないか? えぇ? 部長さぁん?」
「ちょっと、しずき。いいって」
さくらが弱腰になるので、零はさくらを制止した。
「ザコが一人減って、確実に1勝取れるさくらがいればチームの勝率は上がるじゃないか、要するにシングルの代表メンバーから一人ザコを追い出せばいいだし」
「もうメンバーは決まってるのよ! 今迄休んでたくせに、大会前にかき回さないで!」
「逃げるつもりかい? じゃあボクは素直に君達の問題行動を学校中に公開しちゃおっかなぁ?」
零はスマホを取り出すと、どこで手に入れたのかさくらが登校拒否になる前、このテニス部で行われていたイジメの数々の証拠写真を大量に持っていた。何処で撮影されたものなのか……部長達が黙っていると、救いの糸でも垂らすように、
「別に一枠よこせとは言ってないんだ。もちろんさくらが負ければ今まで通りで構わない。受けてくれれば結果はどうあれこれは公表しないよ。さぁ、どうする? 悪くない条件だと思うけどなぁ、今の時代イジメは叩かれるぜぇ。SNSに晒しちゃおうっかなぁ」
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