第4話 イジメの復讐をする布石にはトップカーストと知り合えばいい
そこにはさくらと同じ制服を身に纏った
登校中、ほぼ全ての人々の視線は零に向かっていた。確かに平凡なさくらは注目される事はない。
だが、教室に入るとそれは変わってくる。
「仲谷さん……」
「学校こなくなった子?」
ざわざわと、不穏な空気が流れる。さくらは既に意気地が折れそうになった時、
「さくらー、はよー! 今日はえらく早い到着じゃないかい? さぁ、座って座って」
バンバンとさくらの席を叩く零、「あ、うん」とさくらがそれに従い自分の席に座る。そんな光景を誰もが怪訝そうに「先輩? 誰?」「さぁ? 仲谷さんの知り合いみたいだけど」と少しばかり教室がガヤガヤと騒がしくなる。そりゃそうだ。部活一筋の真面目なさくらに対して、完全に校則を無視したピアスに着崩した制服。綺麗な容姿。そしてこのハイテンションはトップカーストにいてもおかしくない。リボンの色から上級生なんだろうと思うがこんな目立った生徒今までに見た事がない。さくらはこの状況大丈夫かと思ったが、
「零先輩じゃない?」「あー、あの零先輩! いいなー、私も話したい」と先ほどまで誰? と言っていた生徒からクラス中に零が認識されていく。今まで当然この学校にいた生徒のように……
「なにこれ? 零なんかした?」
「何言ってんだよー、さくらぁ。小学校の頃から一緒に学校行ってんぢゃん!」
「はぁ?」
零が何かした、それだけは間違いない。そしてそれが確信に変わるのはクラスの担任がホームルームにやってきた事で判明する。覇気のない瞳、事なかれ主義の四十を前にした女性担任が「仲谷さん……登校したのね」と不登校の教え子がやってきたというのは面倒そうな表情を浮かべ、視線は零に移る。「貴女……二年生? あー、零さん! はやく、自分の教室に戻って! また一年生はじめるつもり?」「えー、もっかい一年生しよっかなー」「ふふふ、本当に授業はじめちゃうわよ!」と担任のテンションが明らかにおかしい。クラスの生徒達も担任と零のやり取りに笑いが漏れる。
「じゃあ、仕方ないからボクは自分の巣にもどろっかなー、じゃあさくらまたランチ時にでもー」
と手を振って零は教室から去っていく。零のクラスなんて存在はしないが、さくらの教室においては零は元々学校に在籍していた生徒として認識されていた。同じような事ができるのであれば彼女はあたかもこの学校の生徒だったかのよう二年生の教室で過ごししているのかもしれない。
そして久々の登校で本来、腫れ物のように扱われるハズのさくらの元にクラスメイト達が集まってくる。
「ねぇねぇ、仲谷さん。零先輩と幼馴染なの? いいなー」
「えっとー、零とは」
命を代償に復讐の手伝いをしてもらう間柄とは言えない。だから「まぁ、そんなところ」と曖昧な返事をかけておいた。元々部活をする為にこの学校に入学したわけで、クラスメイトともあまり認識はなかったが、話してみるとみんな気さくで良い人ばかりだった。
「部活がなくても、学校って楽しかったんだ」
そんな事を思ったさくらだが、いずれ自分の命は零に渡す事になる。惜しくないといえば嘘になるが、今こう思えたのも零がいたからだ。今更契約を無しにはできないし、さくらは無しにするつもりもない。自分は楽しい学校生活を送る為にここに戻ってきたわけじゃない。
そして、ランチタイムにさらなるイベントがさくらを待っていた。零がさくらの教室にやってきて「おーい、さくらー! お弁当食べよう」と、教室を出るとそこには登校拒否する前のさくらでも知っている上級生の先輩や、他数人が待っていた。いずれも学校のトップカーストに位置する生徒達なんだろう。なんの騒ぎだろうと他のクラスの生徒もこちらを注目している。
「みんな紹介するよ。ボクの妹分、さくらさ! 仲良くしてあげて」
「よろしく!」
「めっちゃ可愛いじゃん! さくらちゃんよろしく」
「よろー!」
「はじめまして、宜しくね」
そんな先輩達を前にさくらは「よ、宜しくお願いします」と言いながら、零はもしかすると復讐なんてくだらないと自分に教えようとしているのかとふと感じてしまった。ランチタイムは上の学年の先輩達だらけだったけど、会話も飽きさせない面白さ、そしてさくらが疎い美容関係なんかも色々と教わり楽しかった。ランチタイムの終わりにさくらは、零に尋ねてみた。
「ねぇ、しずき。もしかして私に復讐やめさせるように動いてない?」
「えー、なんで? ボクは君のお願いをかなえる為にここにいるんだぜ? そんなわけないぢゃん」
「だって、今日一日、学校楽しいし、復讐とか一瞬忘れてた時とかあるし……」
「復讐を辞めたいと、そう言いたいのかな? 前にも言ったけど」
「違うよ! 私は復讐をする為にこの学校に戻ってきたから……」
零はさくらの頭をポンポンと優しく叩いた。零を見つめると真紅の瞳がさくらを見つめている。どんな感情なのか分からない。だけど、綺麗な瞳。花びらのような唇が動くと零はさくらにこう言った。
「これらは復習の為の布石だよ。イジメて不登校になった人間が学校に戻ってくるや否や、何故かカースト上位の生徒達との付き合いがある。さて、それを見たイジメグループはどう思うでしょう? 答えは簡単だよねぇ。あ、やべぇ! ってなもんよ。さぁ、続きは部活でね。ボクはこれでも忙しい身さ。なにやら、ラブレターを貰ったらしい。女子が女子にって、狂ってるねぇ。じゃあまた放課後」
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