第二話《無名者の堕落》

男は廃墟を歩き、馬の蹄の音が荒涼とした土地に響き渡る。エリアは静かに彼の胸に寄りかかり、目を閉じ、顔色は青白く、まるで底知れぬ悪夢に囚われているかのようだった。男は手にした手綱をしっかりと握り、目は確固たる決意を秘めて深く沈んでいる。その心には言葉にできない痛みが広がっているようだった。過去を振り返り、失ったすべてと果たせなかった約束を思い出す。ひと足ひと足が、過去の死体の上を踏んでいるような感覚だ。傷はまだ痛むが、それが最も耐え難いわけではない。


馬が突然立ち止まり、男は手綱を引き、前方の焦土を見上げる。空気には焦げた匂いが漂っている。男は低く呟いた。「ここが聖国と連邦の戦場か?」


頭を下げると、男の目は懐のエリアに落ち、彼女の額の髪をそっと撫で、心配そうな声で言った。「エリア、必ず道を見つけるよ……必ず。」


その時、遠くから鋭い悲鳴が聞こえ、大地が震える。男の体は一瞬で引き締まり、心拍が速くなり、すぐに馬の背から剣を引き抜いて目を鋭くする。エリアをさらに守るように抱きしめ、彼女を静かな草地に優しく下ろす。布で彼女の体を包み、寒さから守るため、男は姿勢を正し、殺気を帯びた眼差しを向けた。


男は一歩一歩音を立てて歩みを進め、足元が重く感じられる。霧の中に巨大な影が現れ、圧迫感が波のように押し寄せる。その目は燃えるような赤い眼で、闇の中で鋭く輝き、ねじれた体からは吐き気を催すような臭いが立ち上る。怪物は全身が毛で覆われ、腹部は無防備で、腐敗した臭いが周囲に広がっている。


この瞬間、男は迷わず剣を握りしめ、怪物の心臓に突き刺した。怪物が倒れた瞬間、男は剣を下に引き、腹を裂く。血が泉のように噴き出し、男の腕を覆う。怪物は狂ったように暴れ、腐食性の液体を吐き出し、それが地面を溶かし、硝酸と吐き気のする臭いを発し、白い煙を立てながら広がっていった。男は素早く後退し、顔を引き締めて、その液体に触れてはいけないと心の中で確信する。彼は振り返り、怪物の死体が泥に溶けていくのを一瞥した後、躊躇せずエリアを抱き上げ、馬に飛び乗って駆け出した。


男は剣をしまい、息を荒くしながら呟いた。「朝が来た。」


彼は深く息を吐き、剣をしまうと、張り詰めていた体が少しずつ緩んでいく。三ヶ月前、彼が住んでいたブロ村は怪物に完全に破壊された。その後の一歩一歩が、災厄の前兆のように感じられる。彼は何度も町を渡り歩き、どこでも夜の帳が降りると怪物に襲われ、無実の人々が命を落としていった。彼の足音は、まるで災厄の号角のようにこれらの奇怪な怪物を引き寄せていた。


彼はよくわかっている。それらの怪物の目的は彼とエリアにあるが、無辜の者たちがその影響を受けてしまっている。さらに厄介なのは、聖団がその原因を知り、彼らを罪の元凶として処罰するよう命じていることだ。彼は死を受け入れることができるが、エリアは……どうすればいいのか?


男の目は依然として意識を失ったエリアに向けられ、そこには深い痛みと無力感が漂っていた。これらの問題は鋭い棘のように心に突き刺さり、息ができなくなる。しかし今、彼はただ前進するしかない。止まることができれば、それは滅亡を意味するからだ。


「俺はただ、君を守りたかった……」男は低く、自責の念を込めて言った。「どうして……こんなに多くの人を巻き添えにしてしまったんだろう?」燃え盛る街道を思い出し、煙の匂いが今も空気中に漂っている。男は剣を握る手に力を込め、内なる後悔と怒りを抑えようとする。


遠く、最初の星が消え、地平線には次第に微光が広がり、まるで希望の一筋が訪れる予兆のようだ——それがどんなに微弱でも、彼はそれに支えられながら進み続けることができる。

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