第10話
「戸締りだけはしっかりやってください」
そう兄にきつく言って、葬儀屋は帰っていった。
死人を扱う生業だ。
もう彼らは人の死については免疫がついているのだろう。
それは強いのか。
哀れなのか。
ただ、今はその感情が欲しいと兄は思った。
……雪が降っている。
そう言えばアイツが来ていない。
「人は死ぬ為に生きている」
そううそぶいていたアイツが来ていない。
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