第50話

両手で頭を抱えるように髪を乱した。

腰をよじって敢えて覚束ない足元でステップを踏んだ。

胸を突き出す。ブラジャーのストラップを肩から下ろした。


若葉はヨシキの目をじっと見つめたまま、挑発的に近づいていく。


ソファーに膝立ちになった若葉は背もたれ越しにヨシキのネクタイを引っ張った。



唇が触れそうなギリギリの距離。


けれども危うげにかわして前かがみになった胸元をわざとらしく見せ付けた。



――近い。



若葉は瞬間的にヨシキの右手にある指輪を盗み見た。



「集中してねえな」



ヨシキはその様子を見逃さなかった。

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