第45話

「…呆れたな。こんなもんを渡すためにタカヒロはお前に会ったのか」


「…タカさんを知ってるの?」


「ああ。誰よりも知ってる」



ヨシキは箱を投げ捨てた。しかしその指先につままれたのは小さなダイアがきらめく指輪。



「…に、偽物だと思う。保証書も何もないし」



確かに近くでまじまじと見ればその輝きはよどんでいて、理性を惑わすような力を秘めているとはいえない。



「だけど欲しいの。…返して」


「これ以外に何か受け取ったか?」


「…何も」


「嘘をつくな」


「嘘じゃない!」



きつく睨み上げるとヨシキの冷ややかな瞳が若葉を射抜いていた。


『所詮お前は汚い仕事をしているからな』と言いたげな表情に若葉は唇をかんだ。

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