第44話

「…な、なんですか?」



ヨシキから視線を外した若葉は、自分の命がこの得体の知れない男の手の中にあることも理解した。



「なんで…追いかけてくるんですか?」


「逃げたからだろ」



鼻で笑うヨシキが近づいてくる気配がする。


咄嗟にソファーから飛び降りようとした若葉だったが手首をつかまれて、その拍子に小さな箱がヨシキの胸元に手繰り寄せられる。



「放して!!」



奪われまいとヨシキの胸を押しのけるが、逆に力強く押しのけられ、箱を手放してしまった若葉はソファーから転げ落ちた。



「やめて!!」



尻餅をついた若葉が見たのは、ヨシキが興味深そうにその箱を開ける光景。


ヨシキは手の中でその箱を開けると、盛大な失笑を聞かせてきた。

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