第29話
あの女と獲物が向こうで落ち合う確立を考えようにも、またしても過酷な展開に頭が「諦めろ」と言ってくる。
ヨシキは数歩下がって壁に背を預けた。
夢のあとの店内を見るのは気が引けた。さっきまで妖艶なオーラを放って踊っていた女が、水商売女のように客に酒を注いでいるからだ。
行くか、行かないか。もういっそのこと、今日はここで終わりにしてしまおうか。
考えるのも億劫になって放棄しようかと思っていたとき、飽きることなく傍にいた従業員が一人の女を呼んだ。
女は玉虫色に輝くTバックの下着を着ている。化粧は暗闇に映えるようにかなり濃い目にしていた。
さながら都会に現れた魔術師のような雰囲気をまとった女は、従業員に対して「なーにー」と間延びした返事をした。
「ほら、若葉ちゃん。たまに一緒に帰るでしょ?あの子、家って相模だよね?」
「ああ。若葉さんね。相模だけどほとんど近くのマンキツにいってるよ」
「え?」
「帰るの面倒なんだって。でも居残りもしたくないんだって。働く気ないんじゃない?」
「どこのマンキツに行ってるか知ってるか?」
ヨシキの問いかけに女は近くの漫画喫茶の店の名前を答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます