第30話
「いつもそこか?」
「うん。安いからそこが良いんだって。それよりお兄さんカッコいいね」
「助かった」
ヨシキは懐の財布から一万円を取り出すと、女の腰を抱き寄せた。
ありきたりで無感動な安い香水の匂いが鼻を掠める。
女を抱き寄せた手で下着の腰紐を引っ張ると、ヒップ側に一万円を差し入れた。
そのまま女から体を離すと何も言わずにドアに向かった。
これで最後にする。
これで空振りだったら、今日はドラマを見ない。
あの安い女の匂いと感触を思い出してやってやる。
理不尽に不貞腐れながらヨシキがドアを開けると、待ちくたびれた表情をしたタカオが苦笑した。
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