第23話

しかしここでぐずぐずしてても埒が明かない。

もしかしたら店の誰かが奴の居場所を知っているかもしれないし。



「あ、あいつは」



額に手をあてて考え込んでいたヨシキに、目の前でうずくまる男はおずおずと告げた。



「昼間…趣味の悪いキーホルダー持ってた」


「キーホルダー?」



その言葉にヨシキは開かれた指の間から男を見下ろす。



「ああ…恐竜のキーホルダーだった。アイツの趣味じゃないからきっと女にでも渡しにいくんだろう」



ヨシキの脳裏にあの薄暗い路地裏がよみがえる。


欲望をそがれるような野暮ったい女。

その女の鞄についていた恐竜のキーホルダー。



「アイツだ」



ヨシキは舌打ちすると許しを請う男の顎を蹴り上げた。


「ギャッ」と悲鳴を上げた男は再びうずくまり、二度と顔を上げようとはしなかった。

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