AM0:03

第15話

「ナイトパックで。シャワー使います」



若葉は職場から近い漫画喫茶に駆け込むと、お目当ての個室をリザーブした。


繁華街からほど近く、お手軽な価格設定のここは人気店で平日でも0時半には満室になってしまう。


それを学習済みの若葉はあえて「終電があるから」と店に告げて早めに上がるようにしている。


本当のところを言うと、終電はまだ走っている。今から駅に向かってもじゅうぶん乗れる時間だ。


しかし若葉にとっての家は最早この漫画喫茶で、そもそも自分がどこに、どういう家に住んでいるのかすら思い出せない。



若葉は今日の寝床になる一畳半の個室に入ると、窮屈なソファーに身を投げた。

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