第13話
「今日、男の客は来なかったか?」
「うちは男のお客さんしか来ませんけど」
「質問を変える。20代後半の黒髪短髪。身長170後半の奴は居なかったか?」
ピンクのショートカットの女は怪訝そうに眉を寄せて「お客さんは多いから分からない」と言う。
「他は?」
ヨシキは煙草の煙りをはきながら目線を上げた。他の三人は“知らない”と言うように目を伏せた。
「…役に立たねぇな」
わざと聞こえるような声量で呟いて舌打ちをする。
その威圧に一人の女が肩を震わせた。
その女は四人の中でも特に地味で、なぜこんな女が夜の店で働いているか疑問を持ちたくなるような風貌だった。
それを象徴するかのように、女のカバンには子供じみた恐竜のキーホルダーがぶら下がっている。
一気に興ざめしたヨシキは何も言わずに四人に背を向けてタカオの元に戻った。
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