第12話
タカオはすかさずヨシキに近づくと声を落として「従業員ですね」と分かりきった事実を伝えてきた。
張り込みをしている店の裏口から出てきたのは、ハッキリ見なくても若い女だと分かる。
若い女は全員で四人。過酷な労働から解放された喜びからかはしゃぐ者、緊張の糸が切れたのかドッと疲れを滲ませる者、それぞれだった。
ヨシキは目を細めて四人をつぶさに観察した。
残念ながらここで一時間張り込んだヨシキの目を癒すような上等な女はいないようだ。
ふと、一人の女がこちらの気配に気づいて歩みを止めた。
そして周りの女に伝えるようにヒソヒソと声を落として何かを囁いている。
四人は足を止めていかがわしい場所に居る、いかがわしいヨシキとタカオに警戒心をむき出しにした。
「…ばれましたね。やりにくくなるな。店に言わなきゃいいけど」
「無理だろうがよ」
ヨシキは手にしていたライターに火をつけるとタカオの肩を押しのけて四人に近づいた。
「ダメですよ」と制止するタカオの声に耳を貸さずに、ヨシキは退屈と疲労と空腹にさいなまれてすっかり荒んだ気持ちごと、四人に対峙した。
「お前らここの従業員か?」
「…はい」
ひとり、ピンクのショートカットの女がおののきながら頷いた。
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