第3話

彼女達曰く「これは水着」らしい。

男から見れば下着も水着も触らない限り一緒なのだが。


店が用意しているビキニに申し訳程度にペチコートやボンデージを上に重ねて、挑発的なコスチュームで接客をする。


色黒、美白、清純、ギャル、田舎者、ジャンキー。


商品になる女は色々な人種がいて、指名をしない限りは回転鮨のように入れ替わり立ち替わり対面の席に座ってくる。


もし会話に行き詰っても問題は無い。


一時間に一回行われる十分程度のダンスショーを見ていれば、退屈しのぎになるのだから。



「タカさん。今日は無口ですね」



若葉(わかば)はそのマーベラスで働いていた。


22歳の彼女は店の従業員の中で中間層にあたる。


おのずと下の若い層や上の成熟した層からはみ出してマーベラスの中で特別親しい子もいなかった。



「あ、うん」



今の彼女の相手である若いサラリーマンが困ったように頷く。


若葉のコスチュームを直視出来ないらしい。その視線はずっと下を向いている。


白いエナメルのビキニの上にざっくりと編んだグレーのオーバーニットを着ている若葉は不思議そうに首を傾げた。

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