第7話

掴んで引っ張るとかじゃないあくまでも私に選ばせるような態度。



つんつんしてくる彼の指先が私の強張った手をほぐしていく。



その悪戯な手にどうしようもないくらいの可愛さを感じて、私はなんの脈略も無く彼に向って体を反すと胸に飛び降りていった。



「わぁっ!!」



もちろん私の突然の奇行に彼はギョッとして、約一メートル50の高さから落ちてくる女子高生を上手に抱きとめる事は出来なかった。



アスファルトに転がり込む私と彼。



しかも彼は派手に体を打ち付けたらしく暫く顔を歪めたまま仰向けに寝っ転がってた。



「……ごめんなさい!」



彼の沈黙にさすがに我に返って急いで体を起してその顔を覗きこんだ。


だけど彼は難しい顔をパッと散らして口角を引き上げた。



「楽しいから許すよ……」


「本当にごめんなさい!私……」


「気にすんなって」



上体を起こしながら彼は私の頭をよしよしと撫でてくる。



すっかり懐いたようにしちゃったけど、考えるまでも無く私はこの人と初対面になる訳で。



変な状況で会ったからか普段の身構えた感じじゃなくて、普通にあたかも隣近所に住むお兄さんのような感じで接してた。



これも飛びたいって願った賜物か。


それとも彼がそういう人なのか。



私の人見知りっていう最初にして最大の関門を突破してきた彼は満足そうに頷きながら私を見つめてた。

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