第8話

「あの……」


「なに?」


「ここのマンションの人ですか?」



そしてよぎる不法侵入を犯した自分の立場。


例えば、そのまま駐輪場で遊んだり物珍しそうにマンション内をウロウロするならまだ救われるけど、不法侵入の最上級『屋上へ上がる』事をしちゃったから。



まだ見ぬ管理人さんの目を吊り上げる顔を想像して、どんどん肩が縮こまっていく。



「うん」


「私……」


「でも俺、ここの奴らと関係無いから」


「え?」


「仲良くない……って言ったら分かる?」



彼は立てた膝の中に私を遠慮がちに閉じ込めながら、笑った。


私の心配も何もかもを見透かしたその目が少し翳った。



「それよりさぁ?ビックリした!自殺志願者が来るなんて思わなかったし!」



でもその翳を払う様に子供っぽい笑みを浮かべて感心したように私を見つめる彼。


その目に好奇心っていうよりかは憧憬の色が滲んでる。



「俺が居た事も気付かなかった?」


「うん」


「それくらい集中してたんだ?凄いな?人の命の衝動って」

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