第3話

二ヶ月前に突然現れたサイードは、本来なら今頃ドバイの王宮で優雅な暮らしをしているはず。


その為にローマを出てからベドウィンを抜けたのに、こうして私とスペインで慎ましい生活に甘んじてる。


ドバイの皇太子様は愚痴は言うけどここの暮らしに不満は無いみたい。


もう「パン美味いな」なんて普通のパンに感激してる。



「サイード甘い物が好きでしょ?蜂蜜を練りこんでみたの」


「いつになってもお前が料理作れるのが不思議だな」


「洞窟では毎日作ってたから。当たり前だよ」


「しかも美味いし」


「ありがとう」



褒められるとなんだか恥ずかしい。


はぐらかすように笑っていたらサイードは顔を上げて扉のほうに目を向けた。


それと同時に扉がノックされる。

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