第7話

「それでそのキャバクラだけど関西の人が出資してるらしいんだよね」


「歌舞伎に新しいキャバクラが出来るのも、関西人が進出すんのも、珍しい事じゃねぇだろ。あのホストクラブ見てみろ?関西人が意気込んで進出したくせに、今じゃ客が来なくて大変だぜ」



晋太郎は鼻で笑いながら水割りを口に含んだ。


新宿界隈に育った人間として、この街を地方の人間の好き勝手にさせない。

なんて自負はさらさらない。


ここは新宿。

黙っていても毎日何万人という地方出身者が訪れる土地だ。

それをいちいちどうしようなんて、ヤクザはおろか警察ですら出来る訳が無い。


成功する者だけが生き残れて、失敗した者は死ぬ気でこの街から逃げていくだけの事。

その流れを晋太郎はよく知っていた。



「タケノコだろ。タケノコ」



育つ奴は青く頑丈な体を天に伸ばしていく。後は刈り取られる。

なんて自然の摂理だろう。


隣りのキャバクラ嬢が「何それ?」と首を傾げるのを見ながら、晋太郎はコリアタウンにある韓国料理屋でこの前食べたタケノコのキムチを思い出してよだれが出そうになった。

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