第5話

馴染みのキャバクラ嬢から連絡がきた午後九時半、晋太郎は歌舞伎町に舞い戻った。


「今日暇っぽいの」と何気なく甘えるだけで来店する晋太郎は、彼女達にとっては扱いやすい事この上ない。


しかも若く、見た目も良いとなれば、一見の疲れたサラリーマンを相手にするより格段に良い。


晋太郎は連絡をしてきたキャバクラ嬢の大袈裟な歓迎を受けながら、慣れた様子で席について水割りを飲んだ。

やっぱり水の味しかしなかった。



「ねえ、シン?あたし来月誕生日なの」


「おー。すげーじゃん。またババアになるんだな」



軽く受け流す晋太郎にキャバ嬢が頬を膨らませる。


「もう」と彼女がそっぽ向いた瞬間、綺麗に巻いた金色の髪から花の香りがした。



「なー?」



晋太郎はその香りに引き寄せられるように、彼女の首筋に顔を寄せた。

少し肩を震わせながら、キャバクラ嬢は困ったようにはにかむ。


新宿を仕切るヤクザの子供。いくら優男に見えても、無下に扱えない。



「何の香水付けてんの?」



晋太郎が鼻をうごめかす度に、女の腰が痺れる。


彼女は瞳をとろけさせながら、晋太郎の胸を優しく押しやった。

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