第4話
晋太郎の父親の組の人間が二週間に一回の地回りで満足するのを、彼は一日と開けるともはや気が気ではなくなる。
自分よりイケてる奴がどこぞのキャバクラで大盤振る舞いをした、なんて聞いた日は火を噴く勢いで怒る。
別に彼は父親を継いで関鼎会の頭目になるつもりなどこれっぽっちもないけれど、小さい頃から「関さんの坊主」とちやほやされると新宿ではその扱いが当然だと思っていた。
驕る者はいずれ潰される。
古い物は新しい物に打って変わる。
そんなの髪の毛の先から爪の先まで理解しているけど、街に来れば「関さん」と猫なで声を掛けられるのがたまらなく心地良かった。
晋太郎はそのまま新宿のターミナル駅をさまよって、新南口の大きな階段下に腰を下ろした。
デニムのポケットから煙草を取り出して咥える。すかさず缶コーヒーを開けて、生温くなった湯気を鼻に当てる。
二酸化炭素とカフェインが融合するこの香りが、晋太郎を刹那的に忘却の彼方へと連れていく。
俺は立派な匂いフェチだ。
晋太郎はおくびもせずにそう豪語する。
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