第2話
横波に煽られ船が引っくり返るんじゃないかと思うほど揺れた。デッキには誰も出ず、船内の横並びになった寂れた椅子の上で嘔吐する人、数名、グッタリとする人、数名。
それでも何とか頑張って島に着いた時には、震えるほどの感動が待っていた。
簡素な護岸工事しか施されていない港は、映画で見る様な外国のビーチにある真っ白い桟橋が堂々と出迎えてきた。
船着きの待合室も五人が入れば窒息死してしまうほど小さくて、シンプルで、綺麗に掃除が行き届いていて……。
……と言っても、そこまで使う必要性が無いから掃除も要らないというのが事実。
とにかく日本国内にこんなカリブ海の様な、地中海の様な、綺麗な港を要した島があったのかと感嘆の溜め息が出た。
ビーチなんてこの世の物とは思えない。
関東の黒い海水と黒い砂浜を見慣れた朱里としては、手に掴んでは留まってはくれない程細かい粒子の白い砂と、時間によって刻々と水面の色が変化する海に、自分は天国に来てるんじゃないかと錯覚すらした。
……までが夢だった。
熱帯地方の特徴、急激な夕立ち、もといスコールは朱里の想像を絶した。
ポツリポツリと降り始めたなぁと思い、水着から服に着替えた。
その間に空からバケツをひっくり返したような雨が落ちてきて、朱里達は慌てて港へと駆け込んだ。
桟橋には既に迎えの連絡船がスタンバイしていて、まずい事に頼りない船体が荒れ始めた波に大きく上下してる。
「……こりゃ、通り雨じゃないなぁ」
そんな事をボンヤリと呟いた船員を横目に朱里達が船内の長椅子に腰かけた時……事件は起こった。
そこからは面白いくらいとんとん拍子だった。
まるで誰かが裏で筋書きを準備していてくれたように朱里は綺麗に船に置き去りにされて、呆然と桟橋に立ち尽くしてる……。
……それが今だった。
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