spiralsquall
第1話
こんな筈じゃないと愕然とした。
大体いつもそうだ。
物事万事上手くいかない。
親切心から誰もが嫌がる事を買って出たり、向上心から敢えて自分を過酷な状況におとしめても、結果は知らぬが仏、周りだけがホックリ顔で自分だけが泣き顔だ。
今日もそうだ。
突然のスコールに降られたと思ったのも束の間、2人の友人がビーチにビニールバックを忘れたと言ったので運動神経抜群の朱里(あかり)が自慢の俊足で取りに行った。
港の桟橋で「直ぐ戻る」と友人2人に手を振って、距離にして二百メートルほど離れたビーチに走って行った。
ビーチの白い砂浜は雨の黒い染みが無数に出来ていて、最早人影も無い。
朱里――最近高校を卒業した今が一番旬だと自負している女の子――はビニールバックを見つけると回れ右して桟橋に戻っていった。
卒業旅行で南の島に行く計画が持ち上がったのはたった三週間前。
計画を練ってる間はワクワクして、荷物を積んでいる時はドキドキした。
東京から飛行機で二時間、念願だった南の島の本島に降り立った瞬間、熱帯地域特有の湿った風に心が跳躍した。
本島だけじゃつまらないから離島に行こうと言い出したのは、名案だと思った。
到着した次の日に本島から船で二時間かけて来たのが、南の果てにある島。
移動時間が二時間という恐ろしい事実に耐えられたのは、ガイドブックに載っていたクリームソーダ色した海と、ホテルの人達が口を揃えて「あそこには一度行った方が良い」と言うからだ。
実際、行きの船の中はそれはそれは悲惨だった。
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