第6話

要は体の良い左遷。


あまりにも恩賞続きの自分の隊に歯止めを掛けたいのだろう。


何たって革命軍――旧政府が滅亡した今となっては官軍――は疎遠だった土地の者同士の寄せ集めなのだから。



あちらが立てばこちらが立たない。



まだ新政府も樹立して間もない段階での僅かな歪みやしこりは後々迷惑だ。


謙真は一晩かけてようやくこの地に留まる事を納得した。



それでもいざ現実を見ればやるせなくなるのが人間で、見送りをせがむ知り合いから逃れて謙真は遠く離れた丘で独り船を見ていた。



船からいっそう濃い煙が上がる。



きっと出航準備も整ったのだろうと、謙真が思った時。



「先生!!」



丘を駆け上がってくる一人の少年が見えた。

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