第5話
俺は今までそれを実行してきた。
それなのに最後の最後でこの様だ。
謙真は子供の様に不貞腐れながらマフラーの中に隠れた唇を歪めた。
戦争は嫌いじゃない。
しかし好きでも無い。
どちらかと言うと『居場所』だと感じた。
それまで全国を統治していた政府が揺らぎかかった時、謙真の故郷、長州の領主は真っ先に反旗を翻した。
それは長い革命と人は言うだろう。
しかしそうは思わない。
始まりから全てに意味があり、一つも無駄な事などないと謙真は思う。
紆余曲折を経て足かけ十年の革命は、今最終段階にある。
謙真ら西の土地から沸き起こった革命軍は着実に旧政府軍を追いこみ、遂には首都を無血で制圧した。
後は旧政府軍の残党を一掃するだけ。
奴等は北へ北へと逃げていって、今では海の向こうの最北の広大な島に逃げていた。
謙真は総大将とは言わなくとも、参謀として一つの隊を率いて参戦する予定だった。
彼の隊はよく功績を上げ、他の部隊からも一目置かれる程の先鋭集団だった。
謙真はそんな部下を引き連れる事を誇りに思っていたし、自分にはそれ相当の力量があると信じていた。
過信ではない。今でもそう言える。
なのに蒸気船の燃料や武器の補給基地として立ち寄ったこの島を去る前日、すなわち昨日謙真はとんでもない辞令を受け取った。
それは首都に滞在する、今回の鎮撫隊の総司令官からだった。
『
たったそれだけの短い文字は、軍事から外された事実を突きつけるには充分だった。
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