第7話
どうやら隣りもここと同じく雑居ビルらしい。
少し位置がずれた所にある非常階段には、ビールケースやおしぼりがうず高く積まれていた。
「そういう恋に恋するロマンチックな恋は十代後半……遅くてもあたしの年になったら卒業しなきゃいけないの」
『え?』
「大人になるとね?恋愛も良いけど仕事もしなきゃいけない。休みの日はエステに買い物だって行くし、たった一人の為にいちいち時間を割いてられないの」
『ちょっと待ってよ』
「平日は忙しいし、休日も忙しい。だったらお酒はいつ飲むの?まさか寝ながら飲むの?大学院生だからそういう素敵な発想持ってんの?」
『ナツ!』
あからさまにおちょくったあたしの言葉に、彼氏がムキになって大声を出す。
だけどお生憎様。
日頃ユニットリーダー平林さんの雷を脳天に食らってるあたしは彼の怒鳴り声なんてダックスフントの泣き声だ。
「めんどくさいんだよねぇー。もっとリラックスして恋愛しようよ?」
もうすっかり冷めたあたしは指に髪を巻き付けて毛先を観察した。
枝毛発見。今日は帰ったら自宅でヘッドスパだね。
「恋に生きる男って結構ウザいよ」
『ナツ!お前それマジで』
「女々しいって言うかさ?もうちょっと自分の時間を大切にしようよ?」
『いい加減にしろ!!』
「それ言うのは自立してからにした方が良いよ?今じゃ気迫が足りないし」
『馬鹿にするな!俺だって』
「あー……負け犬の遠吠えが聞こえる」
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