第5話

「お、男?」



電波無いイコール男。


なんだその方程式は、と首を傾げた私に駅のアナウンスが聞こえてくる。



『だから慌てて移動したんだろ?』


「ちょっと待ってよ。どうしてそうなるの?」


『ナツはしょっちゅう“飲みに行ってる”だ。そんなのウソ臭い』


「社会人になれば分かるよ。世間にはお酒で流さなきゃやってられない現実しかないってね」


『馬鹿にしてんの?』


「馬鹿にしてないよ」


『だったら早く帰んなよ』



ますます意味不明な彼氏は、さすが大学院生。


お気楽な学生時代を送ったあたしじゃ到底考えられないくらい、ぶっ飛びの発想力と思考力を持っている。


『電波が無いと男と居る』の次は『馬鹿にしてないのなら帰れ』だ。



……あ、コイツめんどくせぇ。



唐突にそう感じながら、あたしはオープントゥパンプスから覗き見えてるペディキュアに目を落とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る