第3話 始まりの街リハジマへようこそ

 街並みは賑わっていた。地面は正方形の何かで舗装されている。聞き覚えのある音楽も流れている。建物は真四角で窓が4つ均等に設置されたものしかなく、違いと言えば壁の色くらいなものだ。モブな顔の男に、モブな赤髪の男に、モブな青髪の……


「待って待って?!みんな顔同じなんだけど!」

「はい!これが今の君の限界です!」


 髪の色はそれぞれ異なるものの、髪型は全員同じショートカット。服装は何故かスーツ。ネクタイも髪と同じ色をしているが、差別化がどうにも雑だ。


「さてさてどうします?ツボでもわりますか?タンス漁りますか?」

「なんで唐突にゲーム風なの」


 彼女の頭の中にある異世界も、結構チグハグだ。いや別に、色んな異世界があってもいいけど……あれ異世界ってなんだ。ど壺にハマりそうになり辞めた。それに、ここは夢だし、いつ覚めてしまってもおかしくない。どうせなら遊び尽くして、リアルに備えたい。


 特になんの目的もなくフラフラと街を歩けば中央の噴水まで辿り着いた。噴水の手前には茶色い木の看板が設置してあり、異様な存在感を放っていた。ひし形のキラキラが空中に点滅しているのだ。看板の貼り紙を覗き込む。


『世界を救う覚悟がお主はあるか?来たれ強者共!見事魔王を討ち滅ぼし、我らに平和と安息を与えたまえ!』


……つまりどういうことなんだ。そう困惑していれば張り紙の端に小さく『お気軽に王様のお城までお尋ねください』と書かれていた。なんなら矢印のステッカーが貼ってあり『この先まっすぐ30mでお城!』とご丁寧に書かれていた。ファンタジーっぽさとリアルさが仲良く張り紙の中に混在していて、なんとも言えない気持ちになる。


「魔王討伐隊の募集ってことでいいのか?これは」

「そうだと思います!」


だとしたら『お気軽にお尋ねください』は良くないだろう。だって魔族の王様で、ラスボスっぽそうだし。


「どうします?魔王討伐しちゃいますか?」

「しちゃいますかってそんな気軽に」

「大丈夫ですよ!ほら最強のふにゃ剣もあるじゃないですか!」


 彼女がそういえば、背負っていた剣が不満そうに震えた。ふにゃ剣って、最強を冠する剣にしては締まらない名前だもんな。俺は剣に同情しつつも、ふにゃ剣は最強には違いないのだ。


「魔王倒して最強勇者になるのも悪くないかもな」

「そうと決まればお城までゴー!ですよ!」


彼女は拳を空高く突き上げる。俺もつられておー!と拳を突き上げてみた。……こんな風に無邪気な行動とったのっていつ以来なんだろう。

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