ニワトリにガルダって流石に名前負けすぎません?
「はぁ、最悪……よりにもよってアイツに借りを作るとか……」
「コケ」
「ん、慰めてくれるの? よしよし、キミはいい子だね〜」
怒ったり落ち込んだりコロコロと表情が変わるミカンを観察していたら、急に頭を撫でられた。
トサカが乱れるので、頭はやめていただきたいのだが。
「うーん、やっぱり名前がないと不便だよね」
「コケ?」
「……よし、今日から君の名前は『ガルダ』だよ!」
「コケッ!?」
なんか勝手に名前が決まったんですけど!?
え、もしかしてミカンちゃんのペット確定コースですか!?
個人的には嬉しいんだけど、いいんかそれ!?
「名前をつけると情が湧くわよ」
「既に湧いてるから問題ないです〜!」
「コォケェ……」
呆れたような表情を浮かべるアイリスと、抱き寄せて頬ずりをキメるミカン。
やっぱりペット確定コースっすね、クォレは。
「ちなみに、ガルダは神話に登場する神聖な鳥なの! すべての鳥の始祖的な存在なんだよ!」
「コケ!?」
「名前負けもいいところね」
「そこ、うっさい!」
いやぁ……ミカンちゃんには悪いけど、思いっきり名前負けしてると思うわ。
こちとらただのニワトリでっせ?
「ん……止まって」
「わ」
「コッ」
と、そんな感じで雑談に花を咲かせていたら、前を歩いていたアイリスが足を止めた。
そのまま身を低くして、茂みの後ろに身を隠す。ミカンもそれに続いて、オレを抱っこしたまま木の後ろに隠れた。
「うわ、でっかぁ……」
「『迷いの森』のヌシね……こんな浅い階層に出てくるなんて、森に何か異常でもあったのかしら」
その直後、デビルボアよりも数倍デカい獣が目の前を横切っていく。
漆黒の体毛を生やした、二足歩行するクマのような見た目の獣だった。
「ウルルルルルルゥ……!」
凄まじいまでの威圧感だ。対面したわけでもないのに、射殺さんばかりの殺気にあてられて鳥肌が止まらない。
もし目の前に飛び出しでもしたら、速攻で八つ裂きにされるんじゃなかろうか。それ程までに、恐ろしすぎる雰囲気を纏っていた。
「あ」
ぐぅ~っ。
「ちょっ、このバカッ……!?」
「コケ……!?」
そんな恐ろしすぎる森のヌシを前に、空気を読まないミカンの腹の音が鳴り響いた。
いや、まぁ、確かに空腹だって言ってたよ? デビルボアに襲われた後も、何もお腹に入れてなかったからね? 腹の虫がなっちゃうのはわかるよ?
でもさぁ──今じゃねーだろ!
「ウルルゥ──グルルルルァァアアアァアァァアァ!!!」
「ちっ!」
「コケーッ!?」
「うわーっ!? ごめんなさーいっ!?」
目の前を通り過ぎる寸前だった森のヌシは、音のした方向──つまりオレたちが隠れている場所目掛けて、その鋭い爪を容赦なく振るった。
木々は中ほどから倒れ、茂みは舞い上がって木の葉と化す。圧倒的すぎる暴力を前に、アイリスとミカンは回避するので精一杯だった。
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