ケンカばっかりしてるけど内心で認め合ってる百合カップル大好き侍

「あ、アイリス……!」

「相変わらずね、ミカン」


 おや? この二人、もしかして知り合いか?


「コケェ……」


 天真爛漫な元気少女と、冷静沈着なクール少女……うーん、とっても妄想が捗ります。

 願わくば、二人は子供のころ同じ学校の同じクラスに在籍したりしててほしい。

 更に言えば、犬猿の仲だけどそれはお互いの長所にコンプレックスを抱いてるからで、内心ではバチバチに嫉妬して認め合っててほしい。


「ん……まだ魔物が居たのね」

「コケ!?」


 なんて妄想していたら、いきなり氷の礫が飛んできた。

 反射的に回避したけど、アレ当たってたらかなり痛かったんじゃなかろうか。


「ちょっ!? 何してんのバカ!」

「バカはそっちでしょ? 魔物をかばうなんて、何考えてるのかしら?」


 ミカンは咄嗟に、オレをアイリスから守るように胸の前で抱きしめた。

 ふむ……ちょっと物足りないけど、背中には確かな柔らかさが感じられるな。ちょっと物足りないけど。


「この子はアタシの命の恩人なの! 魔物なんかじゃないんだから!」

「コケェ……!」


 おぉ……ミカンちゃんええ子や……出会いこそアレだったけど、本質的には優しい子なんだろうな。

 というか、それだけ腹ペコだったって事だろう。空腹は容易く人を狂わせるからね、しょうがないね。


「……そう。まぁ、非力で無害そうだし、好きにするといいわ」

「コケ」


 非力で無害そうで悪かったですねぇ。所詮この身体はただの無力なニワトリですよーだ。


「とにかく、これで依頼は完了……一緒に帰るわよ、ミカン」

「ふぇ? 依頼って?」

「森の奥で遭難したどっかのおバカさんを、こうして助ける依頼のことよ。あなたのパーティーメンバーが、随分と心配していたから」

「そ、そうなんだ〜……アハハ……」


 ジトっとした視線をアイリスから向けられ、誤魔化すようにミカンは苦笑いを浮かべた。

 やっぱり遭難してたのか、この子。助けが来てくれてマジで良かったな。


「まったく……あなた、子供の頃から何も変わってないのね」

「そっ! そっちこそ何も変わってないじゃん! 未だにパーティも組んでないボッチ冒険者のクセに!」

「人数が多いと邪魔だもの」

「言い切りやがったコイツ……!」


 あくまで冷静な態度を崩さずレスバするアイリスに対し、ミカンはだいぶ感情的にまくし立てている。

 ふむふむ、やっぱり予想通り犬猿の仲っぽいな。こういうタイプの百合も大好物です、ごちそうさま。


「それより早く立って。対象を捕まえて、ギルドに報告に行かなきゃいけないんだから」

「捕まえ、って……人を動物かなんかみたいに……」

「実際、動物でしょう? スキルツリー的に」

「その話はするなぁー!」


 デビルボアから華麗に降りたアイリスは、そのまま街があるであろう方向に歩き始める。

 そんなアイリスの後を、怒りながら付いていくミカンなのであった。

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