第5話 私はこの国で最強の魔女なので、四の五の言うやつは、暴力で速攻黙らせます。
その瞬間、国王が狼狽し、目を逸らす。
周囲の空気がさらに重くなったが、アリシアは意に介さない。
「じゃあセドリック。その証拠とやらを見せてちょうだい」
「……これを見ろ。他国との密通を示す手紙だ!」
アリシアはその紙を受け取り、しばらく目を通した。そして、ゆっくりと顔を上げる。
「これ……本気で言ってるの?」
紙を指で弾きながら、冷笑を浮かべた。
「宛名も差出人も曖昧。印章もない、こんな稚拙な偽造で国家反逆罪を主張するとか、本当に王太子の肩書きに見合う知性があるの?」
その場の誰もが息を飲む中、セドリックの顔は青ざめ、完全に言葉を失った。
アリシアは冷徹な目でセドリックを見つめながら、さらに追い討ちをかける。
「こんな紙切れを公にする前に、もう少し調べたほうがよかったんじゃないの? 手紙にしても、内容の一部に矛盾がある。言っておくけど、あまりにも初歩的なミスが多すぎて、まだ偽造ですと言われた方が真実味があるわよ。――もしこれが本当に証拠だと思っているのなら、王太子って名乗るのやめた方がいいわよ、迷惑だから」
セドリックは再び開いた口を閉じ、目を逸らした。周囲の人々もその場にいたことを後悔しているような空気が漂う。
「で。これで、どうやって私を断罪するつもりだったのかしら? 私を『罪人』だと決めつけるなら、本物の確たる証拠を持ってきなさい」
「なんだと、貴様!!」
セドリックの怒鳴り声が響くが、アリシアはわずかにため息をつき、視線を手枷に向けた。
「ところで。……これ、役に立つとでも思ってたの?」
その瞬間、アリシアの手から激しい光が放たれ、手枷は音を立てて粉々に砕け散った。青白い光が宮廷内を駆け巡り、空気がひんやりと凍りつくような感覚を全員に与える。その圧倒的な力に、場にいる全員が膝をつき、動けなくなった。
その魔力は、まるで言葉を発することを許さないかのように、場の空気を支配する。アリシアの冷徹な目が周囲を一瞥するだけで、騎士たちもすぐにその場に倒れ込み、足を動かすことすらできなくなる。
アリシアは悠然と、その圧倒的な力を感じ取る宮廷の中で立ち上がった。
「さて、私の力を封じたつもりだったのかしら? そんなもの、最初から通用しないわよ。」
彼女の声は高く、冷たく響き渡る。その言葉には何の動揺も混じっていなかった。
「捕えろ!」
国王が命じる声が虚しく響く中、数十人の騎士たちがアリシアの力に圧倒され、壁に叩きつけられ、動くことすらできない。アリシアはその光景を見ても、微動だにしない。
「魔女め!」
王太子セドリックが叫ぶが、その声には力がなかった。
アリシアはセドリックに冷たい視線を投げると、静かな笑みを浮かべながら答える。
「言葉が通じないのなら、これ以上話しても無駄みたいね。――私はこの国で最強の魔女なの。だから、四の五の言うやつは、暴力で速攻黙らせます」
その言葉が終わると同時に、セドリックはまるで風に吹かれたかのように吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。騎士たちも力なく倒れ込み、広間には静寂が広がる。
その静けさが、すべてを支配するように感じられた。
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