第9話 結末が、どうなるのか楽しみにしているわね。



 アリシアは冷徹な目で王太子と国王を見据え、その場に漂う空気の重さに一瞬も怯むことなく歩み寄った。彼女の歩み一歩ごとに、二人の心はますます凍りつき、恐怖がどんどん膨れ上がっていくのが分かる。まるで自分たちの命が秒読みのように迫っていることを、身をもって感じていた。


 アリシアは無言のまま、王太子と国王の前で立ち止まる。その表情に浮かぶのは冷徹な決意と、彼らの裏切りを忘れないという揺るぎない覚悟だけだった。どんな言葉も、もはや彼女に届くことはないことを、二人は痛感していた。


 王太子と国王は、恐怖に震えながらアリシアに許しを乞うた。


「す、すまなかった! 私たちが間違っていた! 許してくれ!」


 その言葉がアリシアの耳に届くことはなかった。彼女はただ冷ややかな視線を王たちに投げかけ、目を細める。


「謝罪? 遅すぎるわ」


 王太子セドリックが必死に手を伸ばし、声を震わせて叫んだ。


「お願いだ、アリシア! すべては私のせいだ! だから、許してくれ!」


 だが、アリシアはその懇願に微動だにせず、目も合わせずに冷徹な言葉を吐き出した。


「私は暴力の魔女よ?」


 その言葉には、ただの名乗りではなく、深い決意が込められていた。


「言葉だけの上っ面の謝罪はもうたくさん。人間の言葉で解決しないのだから、今後分かり合える日は永遠に来ないでしょうね」


 王太子は言葉を詰まらせ、国王も視線を逸らすしかなかった。アリシアは冷徹に二人を見下ろしながら、最終的な一撃を放った。


「あなたたちが選んだのは、私を敵に回すこと」


 アリシアは振り返りもせず、背を向けると、ゆっくりと歩き出した。その歩みは、彼女がこれまでのすべてを振り払うような力強さを持っていた。


「私がここに留まる理由はもうないわ」


 その言葉が空気を切り裂くと、王たちは言葉を失い、ただ無力に立ち尽くすしかなかった。彼女の後ろ姿が遠ざかるその瞬間、王国が抱えた崩壊の予兆が、二人に重くのしかかる。


「結末が、どうなるのか楽しみにしているわね」


 アリシアの言葉が、まるで死刑宣告のように響く。

 王国の運命は、もう決して戻ることはない。

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