第8話 あなたの罪を数えましょう。


 セドリックは怒りに任せて、いきり立ちながらアリシアに飛びかかってきた。しかし、アリシアはその動きを軽くいなすと、瞬時に彼の横顔に盛大に握りこぶしを穿った。


「ぐっ…!」


 セドリックはよろけ、足元がふらつく。彼が再び立ち上がろうとした瞬間、アリシアはその隙を逃さず、今度は腹部に思い切り一撃を放った。息もできずに彼は膝をつき、顔を歪めながら倒れ込む。


「かはっ」


 セドリックはアリシアの冷徹な目に見下ろされ、震えるように一歩後退した。


「あなた、自分の罪について考えたことはある?」


 アリシアの冷徹な視線がセドリックを捉えたまま、言葉が鋭く響く。


「私がいくらあなたの言うことを聞こうと、あなたはその度に私を裏切り、私の意志を無視して、ひたすらに暴力と戦争を引き起こした。私があなたに言ったこと、あなたに反対したことを、これまでたった一度でも受け入れたことがあったかしら?」


 王太子は顔を歪ませ、口を開こうとするが、アリシアはそれを無視して言葉を続けた。


「結局、あなたが求めていたものは権力と支配だけだった。それだけのために、私は何度もあなたに振り回され、私の世界を破壊された。そして、最終的には私を裏切り、あなたが望むものだけを手に入れようとした」


 アリシアの冷たい視線は、王太子の心の奥深くまで届き、彼はその重みを感じて肩を震わせる。だが、彼がどれほど後悔しようとも、その罪は消えない。


「あなたは私を利用し、私を傷つけ、私の大切なものを奪った。それがあなたの罪よ」


 その言葉は王太子の心を完全に打ち砕き、彼は無力感に支配されたように、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る