第2話 魔法だけが得意って、誰が言いました?

 アリシアはユネストレイグ国で「最強の魔女」と称されていた。


 彼女の名は、かつて隣国の侵攻を退け、国内の魔物を一掃した英雄として、民の間で語り継がれていた。その力は計り知れず、アリシアの存在は国の守り神のようなものだった。


 だが、力を持つ者が必ずしも尊敬を受けるわけではない。逆に、その力を恐れる者が現れることもある。


「最強の魔女だって? あの女がいるせいで、私たちの権威が揺らぐ!」


 王太子セドリックは、アリシアの名を口にするたびに顔をしかめていた。


 民衆の信頼と尊敬を集めるアリシアの存在が、セドリックの権力に対する脅威となっていた。王太子は、彼女が自分の上に立つ可能性を恐れ、その力を排除しようと決意した。


 国王も同様だった。


 アリシアの力に対して疑念と嫉妬を抱いていた彼は、自身の統治が民に評価されるためには、彼女の存在が邪魔であると信じていた。


 彼にとって、アリシアはもはや守護者ではなく、脅威でしかなかった。


「魔女アリシアは強大すぎる。あの力を封じる必要がある。」


 国王はその考えを口にした。


 彼は、アリシアがいなければ、国の運営が自分の手のひらで転がると信じて疑わなかった。民の信頼を手に入れたかったのは、自分だと思い込んでいた。


 こうして、国王と王太子による「最強の魔女排除計画」が動き出した。


 魔女が持つ力を封じ、彼女を排除することで、国を完全に掌握しようとする陰謀が進行していった。


 だが、彼らは忘れていた。


 アリシアがただの魔女ではなく、「直接的な暴力物理攻撃」も得意とする魔女であることを。


 彼女の力は、魔法の技術だけではなく、戦いと破壊においても圧倒的だった。


 アリシアは、決してただの「英雄」ではなく、その名の通り、最強の魔女だった。


 肉弾戦においても、アリシアは歴戦の勇者顔負けの技術と腕っぷしを持っていた。


 剣を片手に振るえば、鋭い刃が敵の防御を次々と打ち破り、その場を切り裂く。


 魔女という呼び名にとどまらず、まるで戦場の猛者のように、彼女は戦いの中で次々と敵を倒していった。


 その動きは、まるで舞うように美しく、しかしその一撃一撃は容赦なく、敵の命を奪っていった。


 ちぎっては切り捨て、ちぎっては切り捨て。


 彼女の剣は、まるで生き物のように巧妙に敵を捉え、瞬く間に戦場を制圧していた。


 魔法の力を使わなくても、その剣技だけでアリシアは圧倒的な存在だった。


 だが、前線に出たことのない国王や王太子、そして魔女を疎ましがっている一部の貴族たちは、この事実を知らなかったのである。


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