第3話 この後どうしたい?

人を助け出したという経験は、正直言って全く無い。

多分、今までの任務の中で助けて欲しいと嘆いていた人間は居たと思う。

けど、私はその度に聞こえないふりをして生きてきた。


全部全部、ガリウスに任せて私は現場から背を向けて去っていた。

……そんな私がどうしてこの子だけを助けようと思ったのかは――自分自身でもよく分からないし、説明が出来ない。


「あー……、、、こういう時って、どうすればいいのかな」


立ち上がりながら、私の前へと歩み寄ってきた少女に向かって問いかける。

背は150cmくらいだろうか、私の身長よりも10cmは圧倒的に高い。

そして、年の頃は私と同じ14くらいに見える。


そんな彼女に、私ですら分からない答えを求めても無意味だという事、自分自身がよく理解しているつもりだったのだが……自然と、私の口は動いていた。


「え!?あ、そうですね…………自己紹介……とかですか、ね?」


まだ私に対して警戒心があるのだろう。

たどたどしく、彼女はこの場の最適解を見出してくれた。

その時、私は理解した。



む。この子、私より優秀じゃね?…………と。



「私は絡繰りの暗殺者……そう呼ばれてる」

「あ、暗殺!?」


驚きのあまりか、上ずった声を発しながらあまり馴染みが無いのであろう言葉を復唱する少女。


「そう、私暗殺者」


左右の計10本ある指をうねうねくねくねとさせながら、刮目せよこの指さばきをと言わんばかりに見せつける私に、少女は「くすっ」といった声と、笑みを漏らした。


「……なんで笑う」


そんな彼女の反応に、私は馬鹿にされたと思いムスッとした声色を出しながら問いかけた。

すると、帰ってきたのは予期せぬもので――。


「あ、ごめんなさい!!なんだか、その……可愛くて」

「…………可愛い?私が?」


思わずキョトンとした顔をしてしまったと思う。

だって、そんな事を言う少女の方が私から見れば圧倒的に可愛くて、可憐だったから。


「はい……あ、次は私の番ですよね。私の名前はリア・ダイナミスカ。リアって呼んでもらって大丈夫です」

「分かった。よろしく」


そうしてある程度話が乗ってきた中で、私は――彼女に対して、重大な決断を問いかける。


「リアは、この後どうするの?」


故郷も、家族も、友達も、知り合いも――全て奪われた彼女が私に課す責任。

それは、関わってしまった以上、彼女の置かれている状況がもう心配要らないと思えるくらいのものになるまで面倒を見るというもの。


無責任に助けるだけ助けて、後は何もせず放任する……なんて事、許されない。

それでこの子が死んだら何のために助けたんだって話だし、関わってしまったからには、心配ないと思えるようになるその時まで傍に居なければならないのだ。


「私は………………」


数秒考えた後、リアは――重苦しい表情を宿しながら、告げる。


「私が住んでいた村――アーラス村へ行くつもりです」

「…………悲惨な現実を再認するとしても?」


思わず、私は問いかけていた。

彼女の表情を見て、私にはどうしてもリアがもう既に巻き起こってしまった現実を許容出来る覚悟を持っていると思えなかったから。


だけど、そんな私の考えは間違いだと知る。

何せ、リアの瞳は――決して、揺らいでなんかいなかったから。

それを確認した私は、荷台から外へ出るために歩を進める。


「リアを攫った盗賊団は全員私が殺した。これから村に行く前に――死体は見慣れておいた方がいい」


デリカシーの無い発言かもしれないけど、私は間違いだと思っちゃいない。

大切な者達の死体を見て、絶望的なまでのショックを受ける前に、ある程度の耐性は必要だろうから。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どうも、気分屋ですぅ。あとがきデス。

書いてて思ったのですが、滅茶苦茶重い話になってません!?え、当初はコメディー的な感じでやっていきたいと思ってたのに!!


ま、まぁ、大丈夫です安心してください。

ここから軽くなるはずなんです、ちょっと主人公の思考が暗殺者なだけあってマイナスというか、堅苦しいというかなんというかで重いだけであって、ここから軽くなるはずなんです!!


胃もたれしないでね!!

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