第2話 テストは迷走!? 不穏なシステム改変の理由
「はあ、また定期テストのやり方変えんの?これで何回目よ?」
そんなこと、私に言われても困る。でも、同級生のサトミはお構いなしだ。
「今度見せ合いながらテストするんだって。それってテストなの?」
「また、学校のパソコンがハッキングされたんでしょ。仕方ないよ」と私はなだめる。
「アミはさ、あったま良いから、見せびらかそうと思ってるんでしょ、このヘンタイ!」
「なんの話よ?」
私たちが高校生になった途端、定期テストのやり方が迷走し始めた。最初はタブレットのマークシート方式だったのだが、急に認証プロセスが増えたり、手書きに戻ったり。そして今回は、生徒同士で回答を見せ合う合同テストになるという話なのだ。
世の中がこんなふうに目まぐるしく変わるようになったのは、「ナダル」の存在が影響しているんだろうと思う。私以外にも誰かがナダルを手にした人がいて、悪さをしているのかもしれない。ナダルを使えば、私だって簡単に学校のシステムを改ざんできる。
「まあまあ、サッチン。続きはウエブで」
ウエブというのは、別にインターネットのWebではない。私たちがいつも使う、チェーン店のバーガーショップだ。
サトミはため息まじりにバッグを肩にかけた。私は、意図したダジャレではないと弁明したかった。
「じゃ、行こうか」とサトミは言った。
「今日は、私がポテトを振る舞おう。特別に揚げたてだよ。見て、見て、カッリカリ」
揚げたてのポテトが、まるで自分の手柄のような言い方だ。サトミはSサイズのポテトを堂々とテーブルの中央に置く。
「次のテストの時、そのお、なんというかぁ、えっとー」
「…ねえ、サッチン。答えを見せてもいいけど、意味ないよ」
サトミが何を言いたいかは、大体わかる。どうせ、テストの解答を見せろというつもりだ。私は真剣な顔になる。
「先生の前で共同テストをするっていうのは、点数に意味がないってことだよ」
「どういうこと?」
私は説明を続ける。
「合同テストってことはね、先生達がテスト中に誰が早く解いたのか確認したり、ディスカッションをさせたりして、要するに過程を見るの。正しい解答を書くことじゃなくて、頭が良さそうな奴を選ぶってこと。だから、当たり前だけど、答えを見せても意味ないよ」
「何よ、それ。結局、いつもと一緒?頭が良いやつが得すんの?」
サトミは不服そうだ。どうやらテストの本質が気に入らないらしい。
「でも、そうじゃない部分もあるね」
「なになに?」
サトミは身を乗り出してきた。ポテトをつかむ手に力が入っている。
「先生に好かれることよ。そもそも先生方のお頭で、誰が優秀かなんてわかるわけないの。好き嫌いで決めるに決まってるじゃない。だから、気に入られるだけで全然違うってこと。だから、毎日良い子にしてなさい」
「あんた、あんな初老の軍団に、ピチピチの私の魅力がわかると思うの?」
サトミはフーっと大きなため息をついた。
その時、窓の外にコバヤカワ先輩の姿が見えた。
私は立ち上がって挨拶しようとした拍子に、窓に激しく頭をぶつけた。
「何やってんのよ、あんた」
サ トミは呆れながら、窓の外を見る。
「ああ、生徒会長ね。あの人なら先生にもモテモテでしょうね」
私にとってのヒロインそのものである、コバヤカワ先輩はいつものように優雅にふわりとスカートを風になびかせ、去っていった。
窓の外には、爽やかな笑顔の余韻が残っていた。
この時には、先輩があんなトラブルに巻き込まれることになるとは思ってもいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます