第7話 「チュロスと甘美な響き」

「あのさ、私たちってずっと一緒にいられるよね」


「幼なじみなんだから、そう

簡単に縁切れることなんてないだろー?」


「そうかなー...?なんか、あんたがもっと大人になって、海外にお仕事行っちゃうとか、さ?例えばね、?なんか...その...」


「その?なんだよーヒナタチャーン、

どうしちゃったんだよー」


なんてことないことで悩んでるヒナタが、かわいくもあり、どうも不思議である。今までそんな話ししたこともなかった。あと、そんなに落ち込む話でもないだろ。俺はだいたい一緒にいるだろーが。


高校は別々になったが、朝昼晩と道端でだっていやでもよく会うし、時々、というかほとんどの週末、互いの家を行き来しているのだ。


幼少期から家族ぐるみの付き合いがある。

ヒナタをひとり手で育てた母親の好物はたい焼きで、よくうちの母親があっちの家に行く時に持たせた。ヒナタはカスタードしか食べなかった。


いつも口の周りにべたべたくっつけながら食べるそれを拭くのは俺の役目だった。


ヒナタの祖父は宇宙工学の研究をしており、時々俺に宇宙の話をしてくれた。壮大すぎて、その時は全部おとぎばなしの中の話しだと思っていた。


ヒナタの祖母は生花の先生で、

面倒見もよく、ヒナタは家族から

とても愛されていた。


それと、ヒナタに関しては、

寝相と寝言がひどいことまで知ってる仲だ。



「例えばさ、その...例えばね?」




「おん」




「あんたに、彼女が出来たとして」




「ほい」




「会えなくなったりとかしない....?」





「ぇ、は、ぃ?...?」





あっという間に食べ終えたチュロスの甘ったるさが口の中に残ったまま、俺は渇き切ったのどから間抜けな声をしぼりだしてしまった。






「...ヒナタ、お前もしかしてさ、」




「うん」




「俺の勘違いだったら全然ごめんなんだけどさ、」




「うん」




「俺のこと」




「うん」




「 すき、......? 」







俺はそんなはずないと思っていた

馬鹿げた妄想をヒナタに

ひけらかしてしまった後、

自分の言葉をしずかに反芻した。


お互い、だんだんと火照り出す

顔や身体に気づきながらも、

見つめあったまま動けずにいたのだった。







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