第6話 「デートのわけ」


「ところで、本当に久しぶりに一緒に遊園地来たけど、なんで急に遊園地だったんだ...?」


俺は心からの疑問をヒナタに投げかけた。


「んとね...。」


と少しうつむいて、ヒナタは黙ってしまった。


何か相談ごとがあったのだろうか。


「......俺もさ、久しぶりに一緒に来れて嬉しいよ、

ヒナタ相変わらず元気そうだし」


「ほんと...?」


「嘘じゃないよ、

ちゃんと遊ぶのも久しぶりかも。」


「ふーん。」


急に冷ややかな返事するヒナタに、

違和感を覚える。


「なぁヒナタ、なんかあったのか?」



......。



無言を貫くな。ヒナタよ。

俺が何かしたって言うのか。

ヒナタへの心配と、

濡れた胸元へ向かう欲望への罪悪感が

脳みその中で交差する。



「ねー、チュロス...食べていーい?」



な。話すのに時間がかかることなんだろう。

もしかして告白か?いやそれはないか。


ヒナタがイタズラな笑みを

浮かべることはあっても、

俺に対して一度でもそのような

感情を抱く素振りを見せるようなことは

これまでなかったからだ。



「チュロス2本ください。」


__はい2本ネ、はい1200円ですー、

はいちょーど...預かりました、

はーい、ちょっと待っててねーハイ、

砂糖たっぷりにしといたよー、どーもねー!__



「ほーら、ヒナタちゃーんお食べなさいー」


「アリガトッ」


口をすぼめてちっちゃくお礼を言うヒナタはなんだかいつもと違って、また別のかわいさがあった。


そして、もぐもぐしているヒナタもなんか良い。


ただ、チュロスの形状が少し

くだらない妄想を広げる材料になって、

俺の脳みそを支配してしまった。


先の方からちいさくもぐもぐしており、

時々砂糖をぺろっと舐めている。




いけない。




よからぬ妄想が止まることを知らない。




俺は思い切りチュロスを口に含み、

妄想を断ち切るように

威勢よくかぶりついたのだった。



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