趣味の問題
「それはもちろん、メイドの幸せを第一に考えることですよ。彼女たちが幸せなら、自然と良い仕事ができるもので」
「私は彼女たちを愛している。だから、私の愛に応えてくれるように努力するのは当然でしょう?」
ー宇多田春兼、メイドの教育係として高名。
秋月毎朝新聞の取材でのコメント。
星野勝は秋月国における野球振興の立役者である。
本人はからっきしだったが。
「なんで野球ヘタなのにプレーしたいんですか?」
と、イジワルな質問にかれは、こう返した。
「決まってるじゃないか。野球を楽しいと思いたいからさ」
北原総一はサッカーボールをドリブルしながら国中を歩いていた。
あるとき、たまたま泊まった宿で同じ宿にいた客に
「なんでそんなんやってるんです、楽しいんですか?」
と、揶揄されたかれはこう返したという。
「楽しい楽しくないのもんじゃない。わしはこれをするために生まれてきたんです」
羽原佳明は生涯を独身で過ごしたいわゆる色好みであった。
あるとき、1夜を共にした女性に
「あんた、結婚しないの?」
と、聞かれたかれは、こう答えた。
「この道、究めれば一生食いっぱぐれはない。これでいいのさ」
花村佳樹はイケメンとして知られていた。
顔の良さのために男女問わずにモテていた。
「うらやましいですねえ」
と、言われたかれは、こう返した。
「そういうもんじゃないよ、恋愛って
上田従道は稀代の名将清盛の弟としてのみ知られる趣味人であった。
いわゆる超常現象界隈では、空飛ぶ円盤の権威。
「かの清盛公の弟がなぜ空飛ぶ円盤の研究を?」
と、聞かれたかれは、こう答えたという。
「清盛のやっていることが、ちっともわかっていなかったからだよ」
石動町枝は試作された人型ロボットのテストパイロットだった。
前職は航空機乗りで、彼女は
「やっぱ、わたしはこういう空気が好きなんだよね」
と、言って休みはわざわざ飛行するために、飛行場に行くほど。
「でもさ、素質ってあるんだね。わたし思ったの。人型ロボットのパイロットになった方がいいなあって」
関口忠広はゾウの置き物を集めるコレクターとして知られていた。
部屋には山のようなゾウ、ゾウ、ゾウ。
「なんで集めてるんです?」
と、訊かれて、笑いながら、こう答えたという。
「だって、ゾウって、カッコイイじゃん」
月読詠一はたびする詩人というか、シンガーソングライターだった。
旅先で、金にもならない歌を歌った。
「なんで、旅を続けるんですか?」
と、聞かれたかれは、こう答えた。
「そうだなあ、旅をつづける意味はないかもしれない。歌を歌うことをやめたら、すぐにでも、旅をやめるだろうな」
劉閻は大陸から移住してきた学者である。
生涯を、山中の庵で隠遁していた。
『みんな、孤独だと言うけど、鳥や木々の囁きがあれば孤独じゃないよ』
と、そんな意味の歌を歌った。皆がこう囃し立てるからだという。
「寂しくないんですか?大勢の中で暮らしたいとは思わないんですか?」
「そこに冒険があるからだ」
「この広い世の中には、まだ見ぬお宝がざくざくと埋まっている。そのすべてを自分の目で確かめたいんだ。それが男ってもんだろ」
「この大宇宙にまだ見ぬ星や生命が満ちていると知り、その謎を解き明かすのが冒険者。
そして私は、そんな彼らの心意気に魅かれてこの世界に飛び込んだのだ」
ー宝田瑛二、冒険家
吉村吉隆は川柳を趣味で書いていた。
『川辺から 川に飛び込む 人々は』
と、下手の横好きであったが。
「こんなことに生涯をかけてたんですか?」
「ははは、失礼だな。でもまあ、そうだな。のんきと言えばのんきだった」
蘆名宮は精力絶倫で知られていらっしゃった。
息子の嫁も寝とったために、帝室は大混乱したと伝わる。
「とうして、そのようになさるのですか?」
と、問われた宮は、こうお答えしたという。
「そうだなあ、私はいつも、自分を恥じながら生きているのだ。しかし、それは不思議なことでね。男はいつも心の中では、本当に堕落することを求めているのだ。しかも、表立って恥知らずの罪におとされることは避けて、心の裏でそれをやりたがるものなのだよ。こういう人っていうのはね、女にもてるのさ」
井川実元は武断的な領主だった父昭元ににず、柔和な人柄であった。
学問好きで、学問を奨励した。
「学ぶことで、なにか得たがありましたか?」
と、あるとき訊かれたかれは、こう答えたという。
「学問など、しなくともよろしい。他人の家にあがるときには靴をぬぐが、家ではいちいち靴などはいていず、そのうちに脱ぐのもはくのも習慣になってしまうものだ。わしなども癖になっていて、いまだに同じときと場所にいるときは、いつも脱いでいる。つまり学びとは、つねにこのようにするものなのだ」
白上屋はトンカツの専門店であった。
流行りではないけど、通好みの店。
「美味しさのコツは、なんですか?」
と、訊かれた店長は、こう答えた。
「揚げたてが一番美味い。二番は漬け込み時間が長すぎないこと」
荒木智和は無類のネコ好きである。
人よりネコを上位に置くほどであった。
「人とネコが戦争したら、とうします?」
と、あるとき訊かれたかれは、こう返したという。
「そりゃ、ネコ側につきますよ。なぜなら、ネコ好きが高じて世界から争いをなくしたい、なんて夢想したりもするからです」
李竜星は格闘家。
大陸からの移民で、苦労して道場をかまえた。
「どんな苦労がありましたか?」
と、問われたかれは、こう答えた。
「別にたいしたことじゃない。ただ、貧乏で嫁ももらえなかっただけだ」
「ボーリングは、ノーパンでやるのが一番面白いんですよ。
あのパンツという束縛から解き放たれて、股間も心もスーッとする」
「僕は趣味が多いけど、仕事以外で一番大切だと思ってるのは家族です」
ー明石洋二。雑文家
自身の趣味であるボーリングについて訊かれて
真崎俊光の娘は秋月国の皇后に仕えた女官。
名前を良子といった。
彼女の妄想日記は、今日では文学的価値があり、同時代をしのぶ史料となっている。
「ホントに、同性異性の恋愛がお好きね、貴女」
「それはそうですわ。なんせ、わたしの数少ない趣味の一つでございますから」
葵瑶一は一流の服屋であった。
その服に、多くの女性は心服したという。
「そんなにだったら、女性にモテたんじゃないですか?」
と、言われたかれは、苦笑いしながらもこう返した。
「それが、そうじゃないんだよ。私は、服を買うときにも、自分のイメージと他人のイメージを気にしすぎるので、どうしても陰気なやつになってしまう。そして、なんだか、高嶺の花みたいな印象を与えてしまうんだ。まあ、こんなのは、言い訳なんだけれどもね
浦田正彦は著名な政治家を父に持つが、長じて小説家となった。
とはいうものの、作品そのものより、将棋や蝶収集家としての方が、知られているかもしれない。
「正直、作品より趣味人として知られるのはどうですか?」
と、揶揄われたかれは、こう答えた。
「それはかまわないな、われわれ将棋指しが将棋に没入するのは、別段人間に興味がないからじゃない」
「私は師を持たないが、また仕えた人は凡百である。独創もない代わりに奇抜もなく、新聞小説の位地におりたのも無心出家のまま ある事を思出したからにすぎない。金が欲しかったわけでもない。三十何歳で夕ごと二銭五厘の三銭で一か年の収入という貧乏歴史家の大家になる気は毛頭ない」
ー名塚和利、武人としての日々のかたわらに書いた文章について
灰村道明は鉄道好きが高じて、秋月国の最初期の鉄道会社の1つを自分の故郷に創設した。
大陸のような巨大な鉄道ではなく、蟻の巣のような細かく張り巡らせた鉄道網を作り上げた。
「難事業なのに、たのしそうですね?」
と、言われたかれは、こう答えた。
「そりゃ当然だ、好きな女といるときより楽しいことは、この世にないよ」
千々和寿和は詩人。
生涯を旅に捧げた。
「旅行の何が楽しいですか?」
と、訊かれたかれは、こう答えた。
「そりゃ食事さ。旅に求めるものが美味しい料理というのは、誰だって同じだよ。毎日旅をして、毎日外食を繰り返すとわかる」
クリス・ナカジマは大陸二世。
移住した人々の教育に尽くした。
「趣味は学ぶことです」
と、自分でいうほどの書斎の主で、まわりからはこう言われた。
「ホント、黙ってると一日じゅうでもあそこで過ごしてるからね」
木下小弥太は詩人で革命家。
あるいは革命家で詩人。
「ほかになにか好きなことがありますか?」
と、問われたかれは、笑いながらこう答えた。
「絵を描くのもすきだな。絵をうまく描くと、普段褒めない連中にほめられるからね」
高原雄太は冒険家。
あるとき、北方の豪雪地帯に冒険しようとしたが、資金が足りなかった。
帝国の貴族だったフランツという大尽に提供してもらった。
「なぜ、資金提供してくれたのですか?」
「ははは、趣味だよ、趣味。こういうのに手を出したくなってね」
アヤカ・ベルヒトルトは秋月国から大陸に留学した婦人。
長じて外交官のベルヒトルト氏と結婚した。
「ご結婚を決め手となったのは?」
と、訊かれた彼女は、こう答えた。
「あら、決まってるわ、この人と結婚したいなーって、ピピッと来たのよ」
成原平通は、大富豪の御曹司であった。
しかし、父の遺産を食い潰すように、道楽に使い続けた。
拘束具コレクターとして名を馳せた。
「なんでそんなに集めてるんです?」
「そりゃ、単純なことだ。それは美しいからだ」
佐々川義隆は秋月国の長者番付に名を連ねるほどの富豪であった。
生涯独身で趣味人として生きた。
いわゆるFPSゲームにも精通してた。
「すごいエイムですね」
「そりゃ、そうだろ、このゲームの賞金の半分はぼくのポケットマネーだぜ?」
北島花江はごく普通の女子高生であった。
縫い物が得意という一点を除いては。
「ホント、花江がいると助かるわねえ」
と、言われた彼女は、こう返した。
「そりゃ、ありがたいわ。だってあたし、得意なことしかしないからねー」
ロイス嬢はメガネが好きであった。
自分でかけるのも。
他人がかけるのを観るのも。
「ホントにメガネ好きねえ」
「そりゃそうよ、なにせメガネだからね」
高梨五郎は軍人として大陸に渡った。
そこで革命家たちと戦ったという。
生涯の大半は公私問わず旅の空であった。
「大変じゃなかったですか?」
「なに、旅が趣味みたいなもんだからな、オレは。多少辛い目には遭ったが、……楽しかったよ」
家永マチは女性ながら大陸で働く人々のために尽くした。
その活動は過激で、いくつかの事件に名を残している。
「モチベーションはなんですか?」
と、問われた彼女はこう答えた。
「そりゃ革命よ。なんせ、この大陸には、革命が足りなすぎる」
久川綾乃は平凡な女性だった。
人並みに結婚して、一児をもうけた。
趣味はパッチワークでよく縫い物をしていた。
「うわあ、綺麗なクリスマスのタペストリー」
「ふふふ、ありがと、これはクリスマスシーズンにと思って作っておいたのよ。もっと凄いのもあるわよ」
綾川恵介は政治家一家の落ちこぼれ。
絵画蒐集が趣味で綾川記念美術館には、かれのコレクションが今もある。
「道楽者ですねえ」
と、揶揄混じりにいわれたかれは、そう返した。
「そうだよ、私は道楽者なんだ。家柄など金を手に入れる為の道具にすぎない」
戸津亮丸は豊かな学識と、破天荒な私生活で知られる。
生涯、百万近い女性と1夜限りの付き合いをしたという。
「モテる秘訣はなんですか?」
の、問われたかれは、こう答えた。
「そうですなあ、やはり、女性を敬うこと。そして、女性を喜ばせることです」
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