第4話 おまえがママになるんだよ!←

 子猫が来た、子猫が来た。

 保健所から家に帰るまで、わたしがどれほど嬉しかったか。

 気持が舞い上がりすぎて事故を起こさないように、ひたすら気を付けて車を運転した。助手席のケージからは子猫たちの鳴き声がする。大丈夫、大丈夫だよ、と何度も声をかけながら実家の事務所へといったん連れ帰った。

 ※すぐに動物病院へ健康診断に連れていきたかったが、午後の診察までに時間があるので先に写真撮りをしようと思った。

 事務所には、兄と両親がいた。わたしがケージを開いて子猫を見せるとみんななんだか、ほわんとした顔になった。

 さて、写真撮影会だ。子猫を一匹ずつ取り出して顔と背中の模様を写していく。

 頭なんてピンポン玉くらいしかない。耳と目が離れていて猫というよりちょっと宇宙人ぽい(個人の感想です)。兄が両手で包むようして子猫を抱く。スマホで撮影する係はわたしだ。子猫の画像があることは、里親探しのときの大切な宣材となる。


 一匹目、モフモフの黒。口の周りが白い。体格、大きめ。

 二匹目、しましま。柄が濃い。体格、一番小さい。

 三匹目、モフモフの灰色。口の周りが白い。頭の毛が爆発している。体格、一番大きい。

 四匹目、しましま。柄が薄い。体格、小さめ。


 一匹目から順にABCDとつけて、みうみさんへ送信して子猫を選んでいただいた。

 みうみさんはCかDか迷った末、Cに決定。一番大きくて、元気いっぱいだったのでわたしがおススメした。

 そうこうしている間に、病院へ連れて行ける時間になったので、まずは健康診断を受けさせることにした。


 動物病院は、実家の猫の時代からもう四半世紀もお世話になっているところだ。先代猫のときにも、粗相の問題だとかいろいろと相談した。※結局去勢手術をしたら、粗相は無くなった。

 受付の窓口で先生の奥様に「あれ?どの猫ちゃん?」と尋ねられたので「実は保健所からかくかくしかじか」と説明をした。

「あらあ、大きくなるまで保健所でみてもらえばよかったのに」

 と言われて、あれ?となった。お世話してくれるの?

「今はすぐに殺処分なんてしないよ。保護団体さんとかと連携して、譲渡していくから」

 ん???

 そうなの? 保健所に置いていたら、数日で処分されると焦っていたのは思い込みだったのか。

 健康診断をしてもらうと、四匹とも元気で体重は200g前後だった。小さい。

 二年前に兄が火事場からレスキューした子猫は500gくらいあったから半分くらいなんだ。

 ※火事場レスキュー猫は、わたしの知り合いのお家で猫かわいがりされている。


 無事に診察も終わり、帰宅。自宅のわたしの仕事場へ連れていく。大きめのたらいに入れていたが、なんだか寒そうなので、急遽手元にあったワイヤーネットで囲いを作った。下には50センチ四方くらいの電気座布団を敷き、その上にペットシーツを敷き詰めた。すると快適になったらしく、団子に固まっていたのがほぐれていく。

 と、いうか、やたら元気のいいもふもふの黒と灰色がネットの囲いを登ってきて盛んに鳴く。

 そういえばミルクの時間らしかったので、まずは猫たちが逃げないように風呂敷で天井を閉じてミルクの準備をした。

 買っておいた紙パックの猫用ミルクをレンジで温めて仕事場へ戻る。すでに鳴き声がすごい。

 慌ててシリンジでミルクを吸い取り、まずは黒に飲ませる。食いつきが凄いし、ぐいぐいと飲んでいくのが分かる。押子が吸う力に引っ張られていくのだ。すごいなあ、と思いつつ四匹に飲ませ終わる。それからトイレの介助。濡らしたトイレットペーパーでお尻を刺激して排泄をさせるのだ。それを四匹。

 終わると子猫たちの動きもゆっくりになって、眠り始めた。

 一回の授乳で、ウエットティッシュのゴミやらなんやらが大量に出た。わたしの服には、ミルクが飛び散っている。

 ああ、使ったシリンジは消毒しなきゃならなかった。まるで、人間の赤ん坊と同じだ。

 すでに夕刻、これから夕食の準備もしなきゃらない。

 日常生活の中に割り込んできた子猫のお世話。

 ちょっと待て、これはいわゆる「ワンオペ」というやつでは。

 気づくのが遅い……。

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