第五章 「迷宮入り」


 さて、次の靴を買おうにも迷う。

 またこの屈辱を味わうのを分かっていてそれでも「白いスニーカー」を選ぶか、それとも、とんだ分からず屋をやめて今すぐ「黒いスニーカー」を買うか。


 どれだけ分かっていても心のままにゆくと、

 やはり迷うのだ。あの白さの良さをもう一度味わいたい。しかし、もうこんな思いをせずとも、黒にしてなるべく長く履くべきか。そもそも、靴なんてものは汚れてくたびれてしまうのだから、何色だとしても履き潰してはすぐ買い替えるのが一般スニーカーユーザーの道理なのでは。


 そう思考を巡り巡らせては決められずに、「白いのにとても汚れたスニーカー」をまだまだ履く。


 だんだんと嫌な気持ちが募る。

 別に、穴が空き、履けないわけではないし。

 ただひたすらに「汚い」のだ。


 私は出かけようとして履くたびに「汚いな。」と落ち込む。

 しかしそれでも愛着が湧き、このスニーカーのことが好きだから、または、ファッション、コーディネートからして履かない選択肢はないのだ。


 外へ繰り出して誰かとすれ違うたびに、

「この人は汚いスニーカーを履く人なんだ」と

 思われているような感覚を持った。


 まぁ、そんなことは私の思い込みである。

 大抵の人は、対して他人に興味がないのは知っていた。

 

私のように自分のことで精一杯になり、いつだって迷宮入りしているのだ。


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