第43話 子供から大人まで好き チーズ

 

 チーズ料理を作りたいと思って考えたけれど定番のグラタンや、温野菜にチーズをかけて食べているリール村。普通のチーズ料理だと目新しさがない。


 「う――ん」

立ったまま、考え込んでしまった。チーズ料理は容器の蓋がちゃんと閉まってないとこぼれやすいし、冷めると固まって食べにくい。何かいい食べ物ないかな?


 「どうしたの? マオ」

声をかけられて、ベルがハーブをもらいに来ていることを思い出した。

 「あ、ああ! 何かチーズ料理を作りたいなと思って考えていた」

僕のクセで、考え込むと周りが見えなくなってしまう。ベルはクスっと笑った。

 「変わらないのね。マオは、考えると周りが見えなくなるの」

ベルとは幼馴染で、小さい頃から一緒にいるからお互いになんでも知っている。


 「でも、色々なアイデアを出せるからいいわ。おかげで私のベジタブルショップも売り上げがいいし、助かってる!」

 ベルはニコッと笑った。指をさして「バジル、もらっていいかな?」と言ってかごに入れた。

 「じゃあ、月末にまとめて請求をお願いね! また新しい料理が出来たら教えてね」

そう言い、バジルを摘み取って帰った。僕はハーブに水をあげてギルドへ向かった。



 「あら、マオさん。お早うございます!」

「マオ君、お早う」

「お早う御座います。サナさん、ショータさん」

 ギルド職員のサナさんとショータさんが話しかけてくれた。ダンジョンの点検と見回りを毎日しているので、ついでにギルドの依頼もこなしている。そのため、僕のギルドクラスはCになった。


 ギルドに依頼がきて、難易度でクラスごとに依頼書を分ける。

辺境の村ダンジョンはわりと珍しい物が豊富にあって、持ち帰る量を制限している。リール村の資源は村の人達と僕がチェックして、やはりこちらも制限している。生態系に影響があったりしないように気をつけて依頼を決める。ギルドと村は協力関係を結んでいる。

 水晶タブレット端末で、情報や依頼の内容など共有できているので水晶タブレットでチェックしている。

 

 「マオ、忙しそうだな」

「ハリマさん!」

 行商人のハリマさんが、ギルドの中の椅子に座ってくつろいでいた。知らせを聞いてなかったので驚いた。僕はハリマさんのとこへ駆け寄った。

「連絡がなかったので驚きました。いつもより早いですね」

 届く荷物の関係でこの村に来た後は、早くてだいたい一週間後になる。三日前に村へ来てくれたばかりだからいつもより早い。

 「隣の国の街に届け物をした帰り、魔物に襲われてさ。この村が近かったから避難してきた」

「魔物が!? 大丈夫でしたか? ケガは……」

僕はハリマさんの全身を見た。

 「ああ。大丈夫。すぐに逃げて来たから」


 ハリマさんはテーブルに肘をつけて、くつろいでいた。どこもケガなどしてなさそうだ。

「ケガが無くて何よりです。良かったら食事処へ来てくださいね」

 「ありがとう、マオ君」

 ハリマさんは僕に返事をして、ポケットから煙草を取り出した。


 「あ。ハリマさん、ここは禁煙ですよ」

ギルド職員のショータさんがハリマさんに注意した。この村の施設のほとんどは禁煙だ。

 「ああ! すまん! 忘れてた」

ホッとしたのだろうか。ハリマさんは禁煙のこの場所で煙草を吸おうとした。


 「煙草か……」

こちらにも煙草やお酒などの嗜好品があった。煙草は高級品なので、吸っている人はあまり見かけない。こちらでも紙に包んだ棒状の煙草だ。棒状か……。

 「あ」

 思いついて、声を出してしまった。

 「どうした? マオ君」

「いえ! 新しい料理をまた思いついたので! また!」  

 僕は食事処へ急いだ。



 「お早うございます。マオ様」

「お早うございます、マオ様」

 食事処に行くと、ミレーヌとサウスさんがお店の前で待っててくれた。

 「お早う! 今日は新作料理が二品あるよ!」

 僕は、はりきって店の中へ入っていった。


 「お早うございます!」

「「お早うございます――!」」

 従業員の人と朝の挨拶。さっそくキッチンへ。

 「今日は、新作料理が二品。もう作ってあるのと、これから作るのがあります」

開店準備は従業員のみんなにお願いして、僕はもう一品を作る準備をした。角煮はもうつくってあるのであとで家から鍋を持ってくる予定だ。


 もう一品は、チーズを使った料理。まず薄力粉と強力粉と他の材料で作る。日本だったら、もう出来てあるものを使えるけどないので作る。


 大変だけどチーズを包む、をまず作った。これがちょっと手間がかかったけれど、おいしいチーズ料理を作るためだ。

 チーズを皮で包んで、油で転がしながらフライパンで揚げ焼きする。油で揚げてもいいけど、これはフライパンで転がしながら焼いた。


 「できた!」

 どちらかというと、おつまみだけど。食べるとカリッカリッで、食感もいいし揚げたてだとチーズがとろけて美味しい。

 「わあ! 美味しいです!」

出来上がった、カリカリチーズをみんなで試食した。カリカリとみんなで食べる、カリカリなチーズは美味しかった。

 「この巻いているものが、カリカリしていて美味しいです!」

「本当! 食感もよくて面白いし、チーズが美味しい!」

 良かった、好評だ。冷めても美味しい。

 

「この巻いている生地は、なんですか?」

聞かれて『餃子の皮』と、言おうとしたけど餃子はないので言ってもわからないと思った。


「あっ! そうだ、餃子を作ろう!」 

 せっかく皮を作ったので、餃子も作ろうと考えた。なぜか皮の方を先に作ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る