第4話 春の嵐

その夜、天気予報が告げていた通り、強い風と雨が街を襲った。

窓に叩きつける雨音と木々の揺れる音が耳に響き、部屋の中にいても外の荒れ模様が感じられる。


布団に身を包みながら、僕はふと美咲先輩のことを思い出していた。

「桜の季節って短いよね。」

そう言った彼女の声が耳に蘇り、胸の奥でかすかな不安が広がった。


翌朝、朝のホームルームで僕たちは、担任の先生から桜の木が倒れたことを知った。

「えー、昨夜の嵐で、桜の木が倒れました。危ないので皆さん近づかないように。」


その言葉に、僕の胸は重く沈んだ。

桜の木は、図書室に寄り添うようにして静かに横たわっていた。

強い風に逆らうことなく、その大きな幹は建物を傷つけることを避けるように倒れている。

まるで長い眠りにつく前に、最後の力で寄り添う場所を選んだかのようだった。

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