第7話 更なる力
シャドウベヒーモスらしき痕跡を発見したマコトはその危険性を感じすぐさま村長の家へ向かった。
村長の家に着くと、数人の村人がマコトが魔物の群れを撃退した事を村長に報告しているところだった。
マコトが現れると村長が振り返り、真剣な顔つきで問いかけた。
「どうした、魔物は倒したそうだが何かあったのか?」
マコトはうなずき、静かに話し始めた。
「シャドウベヒーモスという魔物が、この近辺に迫っている可能性が高いです。以前商人から聞いた話によると、辺境の村や隊商が次々と壊滅させて暫くは動向が不明でした。ですが……さっき森の奥でシャドウベヒーモスの疑いのある痕跡を見つけました」
その言葉に村人たちはざわつき始めた。
「シャドウベヒーモス……? そんな名前の魔物、聞いたこともないぞ……。」
「そんな恐ろしい化け物が本当に来るのか?」
村長が手を挙げて村人たちを静め、冷静な口調で続けた。
「具体的にどれほどの脅威なのか、教えてくれ。」
マコトは深呼吸し、落ち着いた声で説明を始めた。
「シャドウベヒーモスは、全長15メートルを超える巨大な魔物です。その体は黒い甲殻で覆われており、並みの武器では傷つけることすらできません。さらに、小型や中型の魔物が逃げ惑い集団で突撃してくるため、さらに厄介です。」
その説明に村人たちは青ざめ、怯えたように声を上げた。
「どうすればそんな化け物に勝てるっていうんだ……!」
「もし襲われたら、村はひとたまりもない……。」
マコトは手を挙げて皆の注目を集め、きっぱりとした口調で言った。
「恐れるのは当然です。しかし、手をこまねいているわけにはいきません。僕たちにはまだ時間があります。その時間を使って、村の防備を強化する必要があります……!」
「具体的にどうするつもりだ?」
村長が眉をひそめながら問う。
マコトはすぐに答えた。
「まず、防壁を強化します。現在の丸太の簡易的な物じゃ到底耐えられません。俺がコンクリートを使って新しい防壁を作ります。そして皆んなで村を囲む堀を作り、魔物が簡単に侵入できないようにしましょう。」
村人たちの中には疑念を抱く者もいた。
「そんな時間のかかることをして間に合うのか?」
「コンクリートってなんだ? そんなもので防げるのか?」
マコトは落ち着いた声で説明を続けた。
「コンクリートは、砂や小石、水を混ぜて固めたもので、非常に強固な素材です。さらに、鉄筋を入れることで更に強い力にも耐えられるようになります。これを使えば、普通の防壁より遥かに丈夫なものが作れるんです。」
村長はしばらく考え込んでいたが、やがて深く息を吐いてうなずいた。
「……お前の話を信じよう。村人全員に協力させる。具体的な指示を頼むぞ。」
村人たちが驚きの表情を浮かべる中、マコトはしっかりと頷いた。
「ありがとうございます。これから設計図を作り、すぐに準備を始めます。」
翌日から、村は一丸となって防衛準備に取り掛かった。マコトは村人たちを集め、手分けして作業を進める計画を立てた。
「まず、防壁に使う鉄筋を作ります。うちの子達と僕が炉と圧延機を使って大量生産します。村人の皆さんには、防壁の基礎となる砂や石を集めていただきます。そして、堀の掘削作業もっqq並行して進めます。」
スピナーくんとクローラーはすぐに堀の掘削作業を開始した。スピナーくんが正確な位置を測りながら地面を掘り進み、クローラーが土砂を運び出す。その効率的な動きに村人たちは目を見張った。
「すげえ……。」
「これならあっという間に完成しちまうそうだ!」
一方、アイリスとベルトランは鍛冶場で村人たちの装備を強化する作業を進めていた。
マコトの提案した複合装甲のアイディアを取り入れ、より耐久性の高い防具が次々と作られていく。
「……なるほどな。確かにお前の言う通り、一つ素材を挟むだけでかなり衝撃を吸収できている。」
ベルトランはぶっきらぼうに言いながらも、どこか感心した様子だった。
「ありがとうございます。これで少しでも村人たちを守れる装備が作れますね。」
アイリスも黙々と作業を進めながら、ふとマコトに声をかけた。
「マコト、あなた……どうしてこんなに沢山のことを知ってるの?スピナーくん達もそうだし、見たことも聞いたこともないことばっかりで」
マコトは一瞬考えたが、以前に読んだ本に書いてあった、という形で答えた。
村人達総出で作業が順調に進む中、マコトは自宅に戻り机に広げた設計図をじっと見つめていた。
村の防備は確実に強化されつつあるが、彼の胸には一つの懸念が残っていた。
(今の蒸気機関と精霊の出力だけで、本当にシャドウベヒーモスを倒せるのか?)
ロボットたちの改良を続けてきたものの、シャドウベヒーモスの圧倒的な力に対抗できるかどうか確信が持てない。蒸気機関の出力は限界に近い状態で、精霊の力をさらに引き出す方法を見つける必要があった。
「……このままじゃダメだ。もっと強い手段が必要だ。」
マコトは深く息を吐き、机の上の設計図に目を落とした。そこには、新たなロボットの設計図が描かれていた。それは、これまでのロボットたちの技術をさらに進化させたもので、合体して巨大な装甲ユニットを形成する構想だった。
(これを完成させれば……あるいは。)
だが、精霊と蒸気の力をどうやって最大限に引き出すかが問題だった。
(蒸気圧を高めれば出力も上がるが、その分安全性が下がる……。かといって精霊だけでは足りない。)
頭を抱えたその時、ふとベルトランの言葉が脳裏をよぎった。
「お前の知識は確かに面白いが、それだけじゃ道具は完成しない。時には直感も必要だ。」
マコトは目を閉じ、深く考え込んだ。
「直感……俺は精霊たちの力をもっと信じてみるべきなのか?」
彼は設計図を握りしめ、新しい試みに取り掛かる決意を固めた。
1週間後、村の堀はほぼ完成し、防壁もほぼ完成していた。村人総出での共同作業で皆んなの士気も高まっていた。
そんな中、遠くから村へ向かって疾走する馬車が見えた。引き連れた馬は息も絶え絶えで、荷台には商人が血まみれの姿で倒れていた。
村人たちは慌てて駆け寄り、マコトもすぐにその場へ向かった。
「どうしたんだ!」
商人は弱々しい声で、しかし必死に叫んだ。
「シャドウベヒーモスだ……! ついに動き出した! 近くの村が……壊滅した……!」
その一言に、村人たちは言葉を失った。マコトは商人を支えながら問いかける。
「その化け物は、どの方角から来ている?」
「……北東だ……大きな影が森を壊しながら……!」
マコトはすぐに村長の元へ向かい、商人の言葉を伝えた。
「……村長、ついに動き始めたようです。」
村長の顔が険しくなる。
「防備はどこまで進んでいる?」
「防壁の建設はほぼ完了しています。ただし、これまでの計画だけでは不十分かもしれません。」
「それでもやるしかないだろう。皆の力を合わせて、この村を守るぞ!」
マコトはうなずきつつも、心の奥で静かに決意を固めた。
(これが本当に最後の戦いになるかもしれない……。ロボットたちと俺の力を、全て賭けるしかない。)
そして、夜空に迫る不気味な雲の影を見上げながら、次の行動に向けて準備を始めた。
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