昨日から

@harutakaosamu

昨日から

 私は見上げる。私の心は泣いている。この秋の空に突き上げるほど、涙が溢れ出している。この悲しみは何をやっても、一時たりとも忘れることは出来ない。

 あなたと別れてまだ何時間も過ぎていない。なのにもう、こんなにも切ない。あなたに会いたい。会いたくて仕方ない。こんなにも深いところにあなたがいる。初めて会ってからまだ何ヶ月も経っていないのに。

 あのとき、自然に力を失った。

 追いかけたのは、言い訳を聞くためじゃなくて。

 抱きしめたい。お願い、「好き」と囁いて。

 危険なんか欲しがらないで。静寂で誤魔化さないで、でも静寂を壊さないで。

 あなたの全てを知らないまま、こんなに好きになって。あなたの心を知らないまま。

 違う、知ってる。分かっている。

 あなたにはまだ、消せない誰かがその胸の中にいるのでしょう。

 あなたは知っている、分かっている。

 私の前にいても、あなたは独りで悲しい恋を想うのでしょう。

 何も話さなくていいから、何も悩まなくていいから。

 お願い、側に居て。

 あなたの声を思い出す。あなたの息を感じる。悲しくて明るい秋の空。私は胸を押さえて立ち尽くす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昨日から @harutakaosamu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画