第6話
滝谷との関係を露呈してることに気付いているのかいないのか…
「私が傷に気付いた時、なんて言い訳する気だったの。それに、桜華に来た事も言わなかったのは何故。話さなくてもいいと判断したのは、私がまだ子供だと思ったから?
インドに行って1週間放置されても平気で待ってると思ってた?」
挑むような、畳み込むような調子で、俺に迫る春菜にたじたじとなる。
いちいち細かい事はさて置いても
「悪い離れすぎたな。コミュニケーション不足だ。春菜。」
「っ、なに?」
興奮した猫みたく毛を逆立ててるように見える春菜を優しく抱きしめた。
「落ち着け。ちゃんと話すから。」
俺は春菜をソファーに誘い並んで座ると肩を抱いて引き寄せた。柔らかな体は素直に俺に体重を預ける。
「ちゃんと話そう。先ずは…ああ、怪我だったな。」
俺は袖をまくり上げてナイフで切られた腕を見せた。何針か縫ったそこには引き連れた皮膚に白い後が残っていた。
じっと傷跡を凝視する春菜は震える声で
「痛かった?」
可愛らしい事を聞く。
「いや。昔からやんちゃしてたしこんな傷たいした事はなかった。ただ、お前と通信してたノートパソコンが壊れちまったのがメチャクチャ痛かった。」
俺の言葉に春菜が固まる。
「それ、パソコンを守ろうとして。」
「人混みで引ったくられそうになったんだよ。」
治安が悪いよなぁ…と笑うと
ぽろりと涙を流す春菜。
「ごめん。匠。」
「阿呆!泣くな。だから話さなかったんだ。」
俺は指で春菜の頬を伝う涙を拭うと
「悪かった。あのときは長いこと放置して。」
春菜をぎゅっと抱きしめた。
「違うの匠。私ね。匠が桜華に来たすぐ後に滝谷に聞いてたの。インドに着いて直ぐに匠が怪我してパソコンが壊れて連絡出来なくなったこと。」
「‥‥‥っ。」
息が止まるかと思った。
「知ってたのかよ。」
コクリと頷く春菜。
「でも匠は何も言わないし私からも聞けないしもしかしたらパソコンを守る為に怪我したのかとか、パソコンが壊れたのはたまたまなのかとか、いっぱい考えた。」
「そうか。やっぱり俺が悪いな。」
中途半端な隠し事しちまったのが原因だ。
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