第5話

「で?納得したのか。」


優しく俺が聞くと


「…うん。」


春菜の答えは曖昧だ。この様子じゃあまだなんか拘ってやがるな。


「ついでだ何でも聞け。今日は機嫌が良いから何でも話してやる。」


「…なんでも?」


ひた!と黒目勝ちな目で見られて少し動揺する。まったく。時々見せる春菜の真剣な顔は俺を即座に野獣に変えちまう。

タチが悪いことに無意識。

いや、真剣な春菜の顔にさえ欲情する俺がおかしいのか。


「…匠?」


黙り込んだ俺に胸元から不審な声が上がる。


「何でも聞け。」


そう答えると


「インドで、怪我したよね。」


しばらくして春菜は思いがけない言葉を吐き出した。知ってたのかよ!


「滝谷保が教えてくれた。理事長を訪ねて来た匠の体から血の匂いがしたって。」


おいおい、マジかよ。刺された何日後の話だよ!てか、やっぱり滝谷と情報交換してやがったな。

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