第4話
賑やかな昼食を終えて久し振りに春菜と2人きり。若頭邸の2階から白波の立つ日本海を眺める春菜。
「海を見ると松江に帰ったんだなぁって思うよ。」
海側の窓辺に立ち俺に華奢な背を向けた春菜は呟いた。
「春菜。」
俺は春菜の肩を抱き隣に立ち同じように海を眺めた。
「ねえ、匠。匠は私が七瀬の娘だから婚約話を受け入れたの?」
「は?何だいきなり。」
「七瀬快里の娘だから…って意味だよ。
狙撃の経緯を知ってたから七瀬に負い目を感じてだから直ぐに断らなかったの?」
春菜の口から切れ切れに聞かされる言葉を理解してため息をついた。思い詰めた顔で何を言い出すかと思えば…。
「軽く10年以上前の話だがそんなに気になるのか?」
俺が笑いながら聞くと
「気になるよ。少なくとも今の私が凄く知りたいことなの。」
春菜が真剣に聞いてくるから俺も真面目に答えた。
「そうだな、あの頃の俺は無鉄砲で無知だったから、」
中学の頃の自分を思い出し苦い笑いがこぼれた。
「だから親父やジイさんが心配して特別な女を持たせようとした。」
「特別な女。それが許嫁?」
たぶんな。呼び方は『婚約者』だろうが『フィアンセ』だろうが何でも良かっと思う。
「俺が無鉄砲に走り出そうとした時に頭に浮かんで抑止力になる女。」
「え?そんなの、私じゃ無理でしょ!」
春菜は困ったように眉を下げて肩を落とした。俺はうつ向く春菜の華奢で柔らかな肩を抱き寄せて髪にキスをした。
「た、匠っ、人が真剣にっ…」
唇を尖らせた春菜が可愛らしくて仕方ねえ。
「お前は特別な女だ。俺だけの。な。」
耳もとで呟けば赤くなって俯いた。
「そんな言い方、狡い。」
狡い?その拗ねた可愛い顔の方が狡いだろ。
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