第3話

三人での食事は賑やかで、隼人の止まらないお喋りに笑いが溢れる。

同席した皐月さんは何とか飯を食わそうとするが終いには諦めた。


「もう。気が済むまでお話なさい。」


あきれた声の皐月さんに隼人はにまっと笑い。


「皐月ばぁば好き!」


満面の笑みで言い切った。


「…いいですけど。」


最初は『ママ』と呼ばせてたがいつの間にか『ばぁば』に変換された。

まあ、自然な流れだ。

くすくすとかわいい笑い顔を見せる春菜から目が離せねえ。


「ガキかよ。」


充や橘にからかわれる筈だ。春菜が笑うたび心臓が跳ねる。隼人と一緒に昼飯にしたのは正解だったな。お陰でゆっくり春菜の顔が見てられる。


「春菜さまの観察日記でも書きますか?」


部屋を出がけに皐月さんに軽く嫌みを言われた。「ばぁば」への八つ当たりか?

まあ、なんでもいい。何とでも言え。

俺は久々にそばにいる妻の姿を満足気に眺めていた。


『匠にぃご機嫌。』


『そうかな?』


『きっといいおはなし!』


『…だといいけど。』


こそこそと内緒話をバレバレにしてる二人にまた笑いが溢れる。

まったく。ただ冷やかす大人より気遣いできる隼人の方が余程大人だ。


「いや、気遣いさせる俺が情けねぇのか。」


まあそれもいい。

結局、俺は春菜が側に居れば何だっていいんだろう。

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